2016/10/21
コンセプトカーを制作する目的は、主に各自動車メーカーが今後販売する車のデザインの方向性や、技術力を示すこととされています。
しかし、実際にはコンセプトカーがそのまま市販されることはありません。
コンセプトカーが市販化できない(しない)理由は様々ありますが、よくある理由としては、デザインを最優先に作っているために法定規格をクリアできないというものがあります。
車両のサイズや、ヘッドライト・テールレンズ・フォグランプなどの灯火類は安全性に直結する部分ですので、非常に細かく厳しい規定が存在します。
コンセプトカーは販売がメインの目的ではないため、そういったデザインの制約を受けることがなく、自由なデザインにすることができますが、いざ市販化しようとすると、法律の壁が立ちはだかることになります。
ただし、後述しますが市販化に至ったコンセプトカーも存在しています。
実は市販化されたコンセプトカーというものはいくつかあります。
しかし、コンセプトカーとして出展された際とは異なるデザインになっていることがほとんどです。
その理由は前述の通り「市販化するにあたって法定規格をクリアして安全性を確保するため」だったり、「コンセプトカーの際には尖りすぎたデザインだったのを、一般大衆向けに広く受け入れられやすいデザインに変更したため」など、様々あるかと思います。
●市販化されたコンセプトカーの例
・2009年東京モーターショーのコンセプトカー「ダイハツ e:S(イース)」
→「ダイハツ ミライース」として2011年に市販化
・2007年東京モーターショーのコンセプトカー「トヨタ iQ」
→「トヨタ iQ」として2008年に市販化
・2007年東京モーターショーのコンセプトカー「ホンダ CR-Z」
→「ホンダ CR-Z」として2010年に市販化
・2005年東京モーターショーのコンセプトカー「レクサス LF-Sh」
→「レクサス LS600h」として2007年に市販化
市販化された多くのコンセプトカーは、「市販化にあたって当たり障りのないデザインになった」か「元々市販化を視野に入れた無難なデザインのコンセプトカーだった」のどちらかである場合が多いのですが、市販化されたコンセプトカーの中でも、奇抜で斬新なデザインをそのままに販売されたものもあります。
「光岡 オロチ」はコンセプトカーとして2001年東京モーターショーに出展した際、その攻撃的で生物のようなデザイン(日本神話のヤマタノオロチがモチーフ)から、光岡のブースに人だかりができ、購入希望が数十名出たことで、市販化が決定したそうです。
法定規格をクリアするために外装の変更はあったものの、そのデザインコンセプトは崩さず、オロチのエクステリアは市販化されたモデルでもひと目でわかるほどの個性を持っています。
モーターショーでは、最初から市販化を度外視したような奇抜なデザインのコンセプトカーが出展されることも珍しくはありません。
●「トヨタ PM」
2003年のモーターショーでトヨタが展示したコンセプトカーが「PM」です。
PMはPersonal Mobility with visual communication systemの略称で、人と車の一体感を追求しているそうです。
運転席はカプセル型、ヘッドランプは触覚のような形状で、オロチとは別の方向性で生物的なデザインになっています。
カプセル正面が上下に開閉し、座席がスライドすることで乗り降りできます。
普通にカプセルを立てた状態で走行するだけでなく、カプセルを寝かせて高速走行したり、前輪をハの字にしてその場で回転できるような走行モードも存在しています。
また、PMは他のPMとのチャットのような情報交換をする機能や、自分で運転せずとも他のPMに追従して走行する機能もあります。
●「メルセデス F 015」
モーターショーではないものの、車の展示も多い「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」で、2015年にメルセデスベンツが発表したコンセプトカーが「F 015」です。
サイドのガラスまで全てメタリックに塗装されて、ドアミラーすらないその奇抜すぎるエクステリアは、まるでSF映画の世界に入ったかのようです。
また、未来的な発想はエクステリアだけでなく、インテリアにも反映されています。
自律走行(完全な自動運転)を前提にデザインしているため、運転席・助手席を180°回転させて、後部座席と向かい合わせで座ることができます。
向かい合わせの座席というのは、自動車において最先端のデザインでありながら、馬車の時代を彷彿とさせます。
さらに、床はウッド調になっていて、リビングルームにいるような感覚になることでしょう。
残念ながらまだまだ自動運転には課題も多く、現時点ではあくまで補助レベルでしかないめ、このコンセプトカーのような車がすぐに市販化されるということはないのでしょうが、メルセデスベンツでは、「車に乗るのは家でくつろぐことの延長で、いつの間にか目的地への移動が完了している」というライフスタイルを将来的には想定しているようです。
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