パンクしても走り続けられるタイヤ

2016/12/05

ランフラットタイヤとは?

ランフラットタイヤ(Run flat tire)は、走行中にタイヤが完全にパンク(=空気圧が0の状態)したとしても、一定の速度(80km/h程度まで)で80~100km程度走行を継続することが可能なように設計されたタイヤです。 具体的にはタイヤのショルダー部(サイド部分)を補強して頑丈にすることで、空気が漏れてもバーストせずタイヤの形状を保つという方法を取っています。ショルダー部を固くするということは、弾性が低下しますので、ノーマルタイヤに比べればロードノイズも大きくなって乗り心地は悪化してしまいます。また、重量のある車を支えられるほどの強度はないため、採用できる車種は限られています。
自転車における「ノーパンクタイヤ」のようにタイヤの中を空気ではなく固形物で詰めると、サイズがまるで違う自動車のタイヤの場合は凄まじい重量増加になり、乗員が感じるロードノイズもかなり酷くなってしまいます。そのため、「パンクしない自動車用タイヤ」というのは今まで実用化されていませんでした。 その代わりに、「パンクしても一定距離走ることができる自動車用のタイヤ」としてブリヂストンを中心としたタイヤメーカーがランフラットタイヤを開発したのです。

自動車用のノーパンクタイヤについては、特殊形状の樹脂(軽量かつ耐荷重・耐久性に優れている)をタイヤの中に詰めることで空気圧の調整を不要にし、パンクの心配がなくなるタイヤをブリヂストンが開発中で、2020年の実用化を目指しているため、まだ先の話ですがいずれは自動車もパンクの心配から完全に開放されることになるのかもしれません。

ランフラットタイヤのメリット

①タイヤがパンクしても一定距離は走ることができる
…最もわかりやすいメリットとしては、タイヤがパンクしても一定距離は走行できるので、路肩に寄せて停車する必要がなくなります。 これは時間の短縮ができるというだけではなく、特に高速道路などにおいては停車していると後続車両に追突される危険性があるので、事故のリスクを減らすことに繋がります。

②バーストが発生しない
…ランフラットタイヤは構造上、パンクしてしまってもバーストが発生することはまずありません。 走行中にバーストしてしまうとスピンや横転になったり、大事故につながりますが、それがないランフラットタイヤは走行中の事故リスクも減らすことができます。

③スペアタイヤを積まなくて良い
…ランフラットタイヤであれば、パンクしてしまってもタイヤを交換するまで走行できますので、スペアタイヤを積む必要がなくなります。 スペアタイヤを積まなくて良いということは、ノーマルタイヤのときと比べて総重量を減らすことができるということですので、燃費の向上が期待できるでしょう。

④環境に良い
…③の影響により、「使わなかったスペアタイヤ」が発生しなくなり、破棄するだけのタイヤが減ることになります。 パンクしてタイヤ交換をすることがなければ無駄に廃棄することになるだけのスペアタイヤが不要となりますので、環境面においてもランフラットタイヤは優秀であると言えます。

⑤パンクの発生率も下がる
…タイヤのパンクには様々なパターンがありますが、釘やガラス片などを踏んで接地する面がパンクする場合もあれば、縁石などでショルダー部を擦って傷つけてしまい、ショルダー部からパンクする場合もあります。 ランフラットタイヤはタイヤのショルダー部を補強しているため、ショルダー部に起因するパンクはノーマルタイヤよりも発生する可能性は低いと言えるでしょう。

ランフラットタイヤのデメリット

①ロードノイズが増える
…タイヤの一部を補強するという構造上避けがたいのですが、弾性が低下してロードノイズが増えます。 その為、乗り心地が低下し、段差を通過する際の衝撃も大きくなります。 ただしランフラットタイヤも年々改良されているため、初期のランフラットタイヤに比べれば格段に乗り心地は改善されています。

②製品の種類や製造されている数が少なく、高価
…ランフラットタイヤはまだ採用車種が(特に国内メーカーにおいては)少なく、量産できないこともあって価格はノーマルタイヤよりも高価です。

③載せ替えできる車が限られている
…ランフラットタイヤは走行中にパンクしても運転者はわかりません。 そのため、タイヤ空気圧を常時監視し、空気圧低下時に警告する「タイヤプレッシャー モニタリングシステム(Tire Pressure Monitoring System)」を搭載している車両に装着することが定められています。 また、弾性がノーマルタイヤと異なるため、サスペンションもランフラットタイヤ用のものである必要があります。

④バネ下重量が増加
…総重量としてはランフラットタイヤの方がノーマルタイヤ(+スペアタイア)よりも軽いのですが、バネ下重量に関してはランフラットタイヤの方が重くなります。バネ下重量は操舵性に影響がでますので、ステアリングが難しくなります。

ランフラットタイヤの採用車種

ランフラットタイヤを標準装備としている車種は、日本のメーカーでは、日産・ハイパーミニ、トヨタ・ソアラ、レクサス各車種、日産・GT-Rなどの高級車です。それ以外にはメーカーオプションとして付けることができる車もあります。 海外メーカーではBMWが積極的で、一部モデルを除いてランフラットタイヤを標準装備としています。その他にはメルセデス・ベンツやアウディなども徐々にランフラットタイヤを標準装備としています。

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