2015/08/25
霊柩車と聞くと、真っ先に思い浮かべるのは、車の後部が神社の神殿や神輿のようなデザインとなっているタイプです。これは、「宮型霊柩車」と呼ばれるものです。宮型霊柩車には、大柄な米国車(リンカーンやキャデラックなど)や国産大型車(クラウンなど)をベースとし、様々な「改造」が施されています。とりわけ、熟練の職人による金細工や木工細工、彫刻、金箔装飾をはじめ、素材として白木や黒檀を贅沢に使用し、地域によっては漆塗りを施したものもあります。これは、かつての日本における葬儀の風習であった野辺送り(棺を納めた神輿を遺族や知人らが担いで墓まで寄り添う慣わし)の神輿を自動車に置き換えたものとされ、自動車による葬送は昭和時代における葬儀のスタンダードとなりました。特に宮型霊柩車は、戦中戦後を健気に生き抜き、高度成長期を支えた故人に対し、最期ぐらいは立派な葬儀でこれまでの労をねぎらってあげたいという遺族の願いにより、かつては利用希望が多かったといわれています。
一方、宮型霊柩車のほかに、「洋型霊柩車」もあります。これは、米国の大型霊柩車にみられる、ステーションワゴン風のスタイルを取り入れたもので、宮型霊柩車の神輿のような大掛かりな装飾はなく、とてもシンプルな印象です。現在では、米国車のみならず、国産車でもさまざまなベース車両が使われており、中にはプリウスをベースに車体をリムジンのように延長改造した「ハイブリッド霊柩車」まで登場しています。
宮型霊柩車は、昭和時代における葬儀のスタンダードとして重用されましたが、現在では洋型霊柩車のほうが宮型霊柩車よりも多く使われるようになっています。その理由はいくつかあります。まず宮型霊柩車の場合は、その見た目ゆえに、仏式や神道式の葬儀に限定されますが、洋型霊柩車であれば、仏式や神道式はもとより、キリスト教式や無宗教の葬儀、そして最近増えている家族葬にもオールマイティに対応できます。また、葬儀場や火葬場周辺の道路は、葬儀関係の車が頻繁に通りますが、不吉というイメージで見られる場合もあり、外観上どうしても目立ってしまう宮型霊柩車の通行を、住民運動によって止めさせた事例まであります。そして、費用の問題もあります。宮型霊柩車は、熟練した職人による手作業ゆえ、洋型に比べると初期投資が高いうえに、装飾物が痛みやすいことから、メンテナンス費用も高くつきます。さらに法的な事情もあります。宮型霊柩車は道路交通法の外部突起物規制のクリアが困難なため、今後どんどん姿を消していくとみられています。 今回は、霊柩車の話題を取り上げてみました。できることなら「宮型」にも「洋型」にも乗りたくないのが本音ですが、いつかはお世話になる霊柩車。豆知識として知っておくとよいでしょう。
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