ホイールベースとは
「スポーツカーに隠された黄金比」の説明の前に「ホイールベース」と「トレッド幅」について触れておきたいと思います。 「ホイールベース」とは、自動車の前輪軸と後輪軸の間の距離のことです。 バス・トラック等の大型車はタイヤ(車輪軸)の数が多いことがありますが、その場合は最前列にある軸と最後列にある軸の間の距離のことを指します。
ホイールベースの外側(車輪軸から車体の先端まで)の距離をオーバーハングと呼び、前輪軸から前端までをフロントオーバーハング、後輪軸から後端までをリアオーバーハングと呼びます。
ホイールベースの長さが何に影響を及ぼすかと言うと、直進走行時の安定性・乗車スペースなどに影響します。 ホイールベースが長くなるほど、蛇行を抑え、安定した走行ができるようになり、広い乗車スペースを確保できるようになりますが、その代わり小回りが利かなくなってしまうデメリットもあります。
バスがわかりやすい例で、ホイールベースが非常に長い分、多くの乗客を載せることができ、ハンドルを激しく動かさなければ蛇行運転にはなりませんが、普通の乗用車に比べると小回りという面では圧倒的に劣っています。
トレッド幅とは
「トレッド」とはタイヤが地面に接触する部分のことで、「トレッド幅」は左右のタイヤの接地面の中心間の距離のことを指します。 車種にもよりますが、前輪と後輪でトレッド幅が異なることは珍しくはありません。
ホイールベースと違い、トレッド幅はスペーサーの装着などで比較的簡単に調整することができます。 トレッド幅が広がると、カーブ走行時の荷重移動量が少なくなるため、小回りが利きやすくなりますが、直進走行時の安定性は低下します。 反対にトレッド幅を狭めると、小回りが利きにくくなるかわり、直進走行時の安定性が向上します。
ホイールベース・トレッド比(W/T)の黄金比
ホイールベースとトレッド幅の比率を「ホイールベース・トレッド比(W/T)」といい、車の運動性能を示す指標のひとつとして用いられています。
「ホイールベース・トレッド比」は
【 ホイールベース長 ÷ トレッド幅 】
で算出し、その値が「1」に近いほど回頭性が高く(小回りが利きやすい)、「2」に近いほど直進走行時の安定性が高まります。
そして、スポーツカーの多くがホイールベース・トレッド比を1.6前後で調整されています。 「ホイールベース・トレッド比」を黄金比(1.618)にすると、運転中に心地よい(運転しやすい)と感じるようです。
ほぼ黄金比の「ホイールベース・トレッド比」を持つ車種の例
ポルシェ・911…(ホイールベース・トレッド比:1.60)
ランボルギーニ・ムルシエラゴ…(ホイールベース・トレッド比:1.60)
トミーカイラ・ZZ…(ホイールベース・トレッド比:1.63)
スズキ・スイフト…(ホイールベース・トレッド比:1.63)
デザイン面だけでなく、運転時の快適さにまで黄金比が関係していたなんて、不思議ですね。