2017/07/31
まず初めに、夏場は車内がどの程度の温度になるかについて説明します。
JAFの実験によると、コンビニやスーパーの駐車場に車を停めた場合(気温35℃で車内室温は25℃から開始)、エアコンなしの無対策で車内温度は最高57℃(ダッシュボード付近79℃)まで上昇し、エアコンなしサンシェード装着で車内温度は最高50℃(ダッシュボード付近52℃)まで上昇、エアコンなし3cmの窓開けで車内温度は最高45℃(ダッシュボード付近75℃)まで上昇したようです。
ダッシュボード付近に子供を乗せることはないでしょうからそこは無視するとしても、車内全体で50℃前後という脅威の室温になりました。
サンシェードや窓開け程度では温度上昇を抑制する効果は低く、熱中症の対策にはならないと言えるでしょう。
これは車内の最高温度についてでしたが、実際に熱中症となってしまうような危険な状態になるまでには、どの程度の時間がかかるのでしょうか?
JAFの前述の実験と同条件で、エアコンが停止されてからわずか8分で熱中症指数(WBGT)が28℃(熱中症発生者数が急増する厳重警戒のレベル)に達し、15分で31℃(多くの人が熱中症になり死に至る可能性もある危険なレベル)を超えたようです。
28℃が厳重警戒で31℃で危険というとあまりピンと来ないかも知れませんが、熱中症指数(WBGT)の数値は通常の気温とは異なりますので、単位こそ同じ「℃」ですが、気温とは全く別のものとして考えましょう。
熱中症指数(WBGT)は「気温」「湿度」「輻射熱」の3要素から計算された指数です。
この中でも特に湿度が重視されますが、湿度が高くなると発汗しても気化できなくなり気化熱による体温調整が働かなくなるため、より熱中症になりやすい環境となります。
このように熱中症のなりやすさは気温だけでは測ることができないため、熱中症指数(WBGT)が用いられています。
エアコンが切れている場合は、わずか8分で熱中症になる可能性があるようですが、これは単なる目安であり、実際に熱中症になるかどうかは個人差や事前に水分をどの程度取っていたかなどで変わりますので、8分までならセーフとは一概に言えません。
熱中症指数による危険性の目安も大人の場合の話であって、大人よりも熱中症になりやすい子供はより警戒する必要があります。
大人は体重の約60%が水分であるのに対し赤ちゃんは体重の70~80%が水分である(=水分が失われることの影響がより大きい)こと、大人に比べ赤ちゃんは基礎代謝が高いため平熱が高くなり汗をかきやすい(赤ちゃんは眠っているだけでも大人が小走りしている時と同程度の代謝をしています)こと、大人より水分代謝も早く乳児にいたっては大人の7倍もの水分代謝速度があることなど、様々な要因により子供は大人よりも短時間で脱水症状・熱中症に至ります。
そのため、汗をかく状況においては大人以上にこまめな水分補給が必須です。
夏場の車内は大人でも非常に危険な温度になりますが、脱水症状・熱中症になりやすい子供にとってはより過酷な環境ですし、大人は暑さを感じれば換気したり外に出たりといった行動を取ることができますが、子供はまだその能力がなかったり、あったとしても先に意識を失う可能性が高く、車内放置というのは本当に危険な行為であることがわかります。
「車内が暑くならなければ熱中症にならないのだからエンジン・エアコンをかけたままなら離れても大丈夫ではないか?」と考える方もいるようですが、それも絶対にしてはいけません。
●突然、エンストする可能性がある
エンジンの内部・点火プラグ・エアフロメーター等の汚れや、エンジンコントロールユニット (ECU) の整備不良等により、アイドリング中でもエンストしてしまう可能性はあります。
エンジンが止まれば当然エアコンも停止しますが、その場に保護者がいなければエンジンの再始動やエアコンをオンにすることができません。
●突然、エアコンが停止する可能性がある
アイドリング中にエアコンが突然停止してしまう可能性は十分に考えられます。
エアコンは自動車の電装品の中でも特に消費電力量が高く、ある程度走行してバッテリーに充電されることを見越して設置されています。
例えエンジンをかけていても、アイドリング中はエンジンの回転数が1000rpm前後ですのでバッテリーの充電量が低く、消費電力量の高いエアコンをかけっぱなしの状態では電力消費量が充電量を上回り、バッテリー上りの状態になってしまう可能性があります。
どの程度でバッテリーが上がるかというのはバッテリーの弱り具合やその時の気温などによるため、いつ上がってしまうかはわかりません。
エンストやバッテリー上りでエアコンが停止してしまう可能性を0にすることは出来ませんが、保護者が常に子供と一緒にいれば、仮にエアコンが突然停止してしまっても、その際に車外に出たり助けを呼ぶなど、即座に対応できます。
もし保護者が離れてしまっている時に何らかの原因でエアコンが停止してしまうと、保護者はその事態に気付けず、取り残された子供が灼熱地獄に晒される事になります。
●そもそも「エンジンをかけたままドライバーが車から離れる」は道路交通法違反にあたる
道路交通法第71条によると、「車両等を離れるときは、その原動機(=エンジン)を止め、完全にブレーキをかける等当該車両等が停止の状態を保つため必要な措置を講ずること。」とあるため、エンジンをかけたまま車両から離れることは道路交通法違反になります。
反則行為名は「停止措置義務違反」で、違反点数1点がつき、反則金として6,000円(普通車)~7,000円(大型車)を支払うことになります。(または刑事処分の場合は5万円以下の罰金)
エンジンを停止せず車を離れるのは、故障などにより運転者が居ない状態で車が走り出してしまう可能性があったり、盗難されて犯罪行為に使用される恐れがあるため、ドアの施錠とエンジンの停止は必須とされています。
自宅駐車場や契約している月極駐車場などは「道路」にはあたりませんので、道路交通法が適用されることはありませんが、防犯上あまり良いことではないので、そのような場所であってもエンジンをかけたまま車から離れることは出来る限り避けましょう。
非常に悲しいことですが、子供が車内放置されて死亡したというニュースはTVやネットなど様々な媒体で毎年この時期になると必ず流れてきます。
現代の日本において普通に生活をしていれば、「子供を車内に放置してしまうと死ぬ可能性がある」という事は、自動車を運転できる年齢であれば知っているはずです。
では、「なぜそれでも車内放置がおこってしまうか」という事ですが、車内の温度上昇や脱水症状・熱中症に対する理解不足、「ちょっとの間だけなら…」という油断などが主な原因と考えられます。
保護者は常に子供を気にかける必要があり、それを365日24時間休みなく続けると言うのは無理があるため、「つい、うっかり」怪我をさせてしまう事などもあるでしょう。
とは言え、一定の安全が確保されている場所で子供から目を離していて何らかの軽微な事故で怪我をしてしまうなどは「つい、うっかり」と呼べる範囲かもしれませんが、明らかに生命の危険が予測される場所・状況で、数十分から数時間もの間、保護者が離れて子供を放置するというのは、「つい、うっかり」で済ませられるレベルを明らかに超えています。
車内放置の熱中症の危険性を正しく理解しているのであれば、車を離れる際は必ず子供も一緒に連れて出歩くはずです。
JAFのアンケートによると、7,048人の回答者のうち28.2%の人が「車内に子供を残したまま車を離れたことがある」と回答しており、その理由は
・子供が寝ていて数分で終わる用事だった
・ATMなどへは子どもを残して行く事がある
・わざわざ下ろすとまたチャイルドシートをするのが面倒
・スーパーの買い物ですぐ戻れる状態だったから、エンジンは切って窓を少し開けて行った
・子供が二人とも寝てしまい、抱っこして連れて出ることが出来なくなった
など、理由は様々ですが多くの例で共通している点として、「短時間であれば車内に子供を残しても大丈夫である」という認識でいることがわかっています。
しかし、前述の通りほんの数分で危険な状態になる可能性があるため、どんな短い用事であっても子供を車内に置き去りにするのはあってはならないことです。
「子供が二人とも寝てしまい、抱っこして連れて出ることが出来なくなった」というケースなどは、車内放置する以外に手がないように思えますが、事前にそうなる可能性があることを想定していれば、ベビーカーと抱っこ紐を同時に使ったり、二人乗りのベビーカーを利用したり、配偶者や親など誰か一緒に来てもらって1人は抱っこしてもらうなど、対策をすることは不可能ではないはずです。
日本においては子供を車内放置することだけで保護者が法的に罰せられることはありませんが、アメリカでは13歳未満の子供を5分以上車内に放置した保護者は逮捕される法律があります(※子供とされる年齢や、放置してはいけない時間は州や自治体により前後します)。これは車内放置された子供の命に別状がなかったとしても逮捕されるということです。
アメリカは地域にもよりますが日本よりも治安状況が悪く(車内放置の場合、熱中症以外にも誘拐される恐れがあります)、児童虐待の程度や件数も酷いため、児童を守るための法律が日本よりも充実していますが、日本でも車内放置を罰する法律があっても良いのではないかと思います。
車内放置されているのを見かけた場合、まずはその付近に保護者(車の持ち主)が居ないかを確認し、すぐ見つからない場合は駐車場のある施設のサービスセンターや係員にその旨を報告するか、警察に通報するなどが得策です。
車内放置されている子供が暑さが我慢できず泣き叫んでいる、汗だくでグッタリとしていて呼びかけても反応がないなど、助けを待つ猶予はなく明らかに一刻を争う場合は、窓ガラスを破壊して即座に救出するほか無いかもしれませんが、発見者にとっては「数十秒前に放置されだした」のか、「既に何時間も放置されている」のかわからないケースが多く、今すぐ救出する必要があるのか、助けを待つことができるのか、判断することができません。
急を要するケースではないのに他者の車の窓ガラスを破壊した場合、器物損壊罪等で訴えられる可能性があります。
その為、もし「窓ガラスを破壊するしかないかも知れない」と思った場合でも、警察に電話をかけて事前に何をすべきかを確認しておくのが良いでしょう。
刑法37条の「緊急避難」に当てはまる場合は窓ガラスの破壊について罪に問われなくなりますが、緊急避難の要件として「他に取るべき方法がなかった場合でなければならない」というものがあるため、他に手段がなかったという事を確認・証明するためにも、警察に連絡を入れておくべきです。
なお、今回は「子供の車内放置」について説明しましたが、体温調整機能が衰えた「お年寄りの車内放置」や、人間以外であっても「ペットの車内放置」についても同様のことが言えます。
ペットの多くは、体毛で覆われていることや汗腺が備わっていないことなどにより、暑さに対しては人間よりも弱い傾向があり、子供と同じく熱中症になるまでの時間が短いのです。
人間に限らず、ペットが車内に放置されているのを見かけた際も助けてあげましょう。
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