カーマニアの中には「キャブ車」の愛好家がいます。若い世代にとってはバイク好きでないと聞き慣れない言葉かもしれません。キャブ車とはどんな車なのでしょうか。また、どうして絶滅したのでしょうか。
キャブ車はどうして絶滅したの?デメリットは?
キャブ車の「キャブ」とはキャブレターの略で、燃料を気化する装置です。液体のままでは燃えにくいため、霧状に噴射して空気と混ぜます。キャブレターは機械の動きだけで、この機能を実現しているのです。
キャブレターには、あらかじめ燃料が送り込まれており、ベンチュリと呼ばれる混合気を作るための装置とつながっています。ベンチュリの内部を空気が速く流れると、気圧が低くなります。一方、キャブレター内の気圧はそのままなので、送られた燃料が自動的に霧状となってベンチュリへと吸い込まれていくわけです。
これは「負圧」という、圧力が高いところから低いところへ移動しようとする原理を利用しており、霧吹きと同じだと考えれば理解しやすいでしょう。
ところがキャブレターは、その仕組みゆえに気候や環境に左右されやすく、動作が安定しません。気温が低い冬は燃料を霧状にできなくなり、逆に暑い夏は燃料を過剰に噴き出してしまいます。標高が高いところでは気圧が変化するため、やはり不安定です。
このような状態になるとエンジンがうまくかかりません。正しく動作させるためには、ドライバーがその都度微調整する必要があります。
また、キャブレターは「ランオン」や「オーバーフロー」といったトラブルにも見舞われます。
ランオンとは、エンジンを切っているのに燃料が消費されてしまう現象です。シリンダー内に溜まった煤が点火したままになり、キャブレターが誤作動して燃料を送り続けてしまいます。
オーバーフローとは、キャブレターに燃料を貯めるチャンバー室のバルブが劣化したり、ゴミが詰まったりするなどして燃料の供給が止まらず、キャブレターからあふれ出す現象です。あふれ出した燃料はエンジン内部に広がり、エンジンオイルを劣化させ、エンジンが焼き付く原因になってしまいます。
そうならないようにキャブレターは、定期的なオーバーホールが必要です。
近年では、燃料の気化をコンピューターで制御する「インジェクション(Fuel Injection)」に取って代わられるようになりました。気候や環境に左右されず、どんなときも安定して作動してくれます。細かな微調整やメンテナンスも不要ですし、ランオンやオーバーフローとも無縁です。
さらにキャブレターを搭載した車は、燃費が悪く排ガス規制をクリアしづらいため、2002年を最後に製造されなくなりました。ただし、バイクでは今でもキャブレターを搭載したモデルが販売されています。
今でも愛されるキャブ車の魅力とは?
動作が不安定なのに、今でもキャブ車が愛されているのは、インジェクションには無い魅力やメリットがあるからです。
インジェクションはすべての動作がコンピューターで制御されています。そのため、ドライバーが自分でチューニングするのは不可能です。業者に依頼すると意外と高額の費用がかかります。また突発的に故障する可能性があり、ドライバーが修理することはできません。インジェクションが故障するだけでも、車は動かなくなってしまいます。
一方キャブレターは、いくらでもチューニングが可能です。気候や環境に合わせて微調整できるのはもちろん、自分の好みに合わせて設定を変えられます。1台の車で道路状況に合わせた運転ができるようになるわけです。もちろん知識があれば修理もできます。
例えば燃料を噴き出す量を調節して混合気の濃さを変えると、エンジンの吹きあがりが重くなったり軽くなったりするはずです。燃料を噴き出すジェットと呼ばれるパーツを調整すれば、加速度も自由自在です。
もちろん、やり過ぎると煤が発生したりプラグが焼きついたり、思うように加速してくれなかったりするので、試行錯誤を繰り返して最適なポイントを探ります。そこがまたマニア心をくすぐるのです。これも機械だけで動作するキャブレターならではといえるでしょう。
もう1つ、キャブレターならではの楽しみ方として、メーカーによる音や運転感覚の違いがあります。原理は同じでも、メーカーによってキャブレターの構造はまったく異なります。当然、発生する音が違いますし、運転感覚も変わるはずです。マニアによって好みのメーカーは異なり、音や運転感覚からメーカーを当てる楽しみもあります。
代表的なメーカーとしては、かつて多くの日本車に採用されていたソレックスや、高級車向けのSU、カーレーサーに重宝されているウェバーなどがあります。OERは純国産です。
ソレックスは既に生産を中止しており、他のメーカーでもキャブレターの生産体制は変わりつつあります。バイクではまだ現役なので、完全に絶滅することは当面ありませんが、そのうち幻の音や運転感覚になってくるでしょう。
キャブ車に乗りたい!中古車はある?改造する?
今からキャブ車に乗るのであれば、2つの方法があります。1つは2002年以前のキャブ車を中古で入手する方法です。さすがにインジェクションの車に比べると、圧倒的に数は少ないですが、インターネットの中古車情報サイトで検索すると、全国に30~50数台ほど出回っています。
どんなに新しいキャブ車でも、新車登録から20年近く経っていますが、さすがに今も現役で走っている車は中古の値段もそれなりです。むしろヴィンテージ化して、思わぬ高値がついている場合もあります。
もう1つは現在の車のインジェクションを外して、キャブレターに載せ替える方法です。手順としてはインジェクション本体とインテークマニホールド、スロットルボディ、配線を外し、エアクリーナーとエンジンの間にキャブレターを取り付けます。水温計や燃料ポンプもキャブレター専用に替え、最後に配線し直して完了です。
簡単そうに見えますが、実際はボンネットを開けるだけでなく、運転席側のフロントパネルも外すなど、かなり大がかりな作業になります。配線もエンジンや車内のあらゆる電装パーツと接続しなければいけないので面倒です。自分で載せ替えるのに自信がなければ、専門業者に依頼したほうが良いでしょう。
なお車検に通すには、排出ガス検査をクリアし、審査を受けた上で構造変更申請の手続きをしなければいけません。
いずれにしてもキャブ車を保有するのは維持費がかかります。中古車であれば既に初度登録から20年近く経っているため、自動車税や自動車重量税が重課になる上に、燃費も現在の車よりも良くありません。キャブレター以外のパーツも寿命を迎えて、交換費用がかさむでしょう。車検にも簡単には通りません。
一方、キャブレターに載せ替えた車は「改造車」とみなされ、手放すときの査定額が大幅に低くなります。業者によっては値がつかないどころか、引き取りすら断られるかもしれません。そんなときは廃車買取です。
カーネクストでは、インジェクションからキャブレターに載せ替えた車でも、0円以上の買取を保証しております。レッカー代や査定料、廃車にかかる手続きの費用は無料です。たとえ値がつかなくても、解体してパーツを再利用したり、スクラップを売却できたりするので、諸費用を無料にできます。ぜひともご相談ください。
まとめ
キャブ車とはキャブレターを搭載した車です。構造がシンプルでチューニングしやすいので、インジェクションに取って代わられた今でも根強い人気があります。ただし現行モデルには搭載されていないため、入手するには20年ほど前の中古車を購入するか、改造するしかありません。