飲酒運転ドライバーが起こす交通死亡事故の件数は減少傾向にあるものの、未だに飲酒運転による危険行為の発生は続いているため、飲酒運転ドライバーに対する行政処分や罰則が平成26年に厳格化されました。また、2024年11月には道路交通法が改正され、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」と明記されたことにより、自転車における酒気帯び運転についても罰則適用へと変わっています。
こちらでは、飲酒運転をした場合の罰則や罰金の内容、また飲酒運転しない・させないための対策について解説します。
飲酒運転は犯罪!どんな罪に問われるのか
飲酒運転には、酒酔い運転と酒気帯び運転とがあり、どちらかの状態で運転を行った場合は交通違反となります。また、犯罪行為になりますので罰則もあります。酒気帯び運転の罪状については、飲酒した時間帯や量、体に残っているアルコールの状況によって異なります。
酒酔い運転の厳しい行政処分と罰則
酒酔い運転とは、アルコールの影響によって車両等の正常な運転ができないおそれがある状態で車を運転することです。酒酔い運転により取り締まりを受けた場合は、以下の行政処分と罰則が科せられます。
行政処分 | 内容 |
---|---|
基礎点数 | 35点 |
免許取り消し | 欠格期間3年 |
酒酔い運転の罰則を受ける人 | 罰則内容 |
---|---|
運転者 | 5年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
車両等の提供者 | 5年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
酒類の提供者・車両の同乗者 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
欠格期間とは、当該期間中は運転免許の取り消し処分を受けたものが運転免許を再度取得することができない期間のことです。上記の欠格期間は、前歴およびその他の累積点数が無い場合の期間となっています。
酒気帯び運転の厳しい行政処分と罰則
酒気帯び運転とは、体内にアルコールを保有している状態で車両等を運転することです。酒気帯び運転により取り締まりを受けた場合は、呼気中のアルコール濃度に応じて以下の行政処分、さらに罰則が科せられます。
酒気帯び運転の罰則を受ける人 | 罰則内容 |
---|---|
運転者 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
車両等の提供者 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
酒類の提供者・車両の同乗者 | 2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
呼気検査を拒否した場合も罰則がある
飲酒運転に対する罰則には、「呼気検査拒否」をした場合の罰則も取り決められています。内容は3カ月以下の懲役または50万円以下の罰金となります。
飲酒運転で人身事故を起こしてしまった場合
飲酒運転(酒酔い運転・酒気帯び運転)のドライバーが2023年中に起こした交通事故件数は、約2,400件となっています。そのうち死亡事故件数は112件です。飲酒していないドライバーが起こした交通事故にくらべて、飲酒運転ドライバーが起こした交通事故の死亡事故率は6倍以上と高くなっており、より危険性が高いことがわかっています。
アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で車を運転し、人身事故(死亡事故・負傷事故)を起こしてしまった場合は【危険運転致死傷罪】となり、さらに重い罰則が科せられます。
刑罰罰則 | 違反点数 | 行政処分 | |
---|---|---|---|
死亡事故 | 1年以上20年以下の懲役 | 45~62点 | 免許取り消し |
負傷事故 | 15年以下の懲役 | 45~55点 | 免許取り消し |
飲酒運転ドライバーが起こした交通事故によって人を死傷させてしまった時、アルコールもしくは薬物の影響の有無があることの発覚を免れるため免脱しようとする行為があった場合は、さらに【過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪】に該当し、12年以下の懲役刑に処されます。
自転車の運転者に対する飲酒運転の罰則強化
また、冒頭でもお伝えした通り道路交通法の改正により、それまでは自転車運転者の酒酔い運転のみが処罰対象となっていましたが、2024年11月からは体内にアルコールを保有する状態での、自転車の酒気帯び運転も罰則の対象に変更となりました。自転車の酒気帯び運転に関する罰則内容は以下の表にまとめています。
罰則を受ける人 | 罰則内容 |
---|---|
自転車の運転者 | 3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
自転車の飲酒運転をするおそれがある者に自転車を提供し、その者が自転車の酒気帯び運転をした場合 | 自転車の提供者に3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
自転車の飲酒運転をする恐れがある者に酒類を提供し、そのものが自転車の酒気帯び運転をした場合 | 酒類の提供者に2年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
自転車の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、自転車で自分を送るよう依頼して同乗し、自転車の運転者が酒気帯び運転をした場合 | 同乗者に2年以下の懲役また30万円以下の罰金 |
以上はあくまで体内にアルコールを保有する状態での自転車の酒気帯び運転をした場合の罰則であり、アルコールの影響を受けて正常な自転車の運転ができないおそれがあるとされる酒酔い運転を行った場合は、さらに厳しい罰則として5年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。
飲酒運転をしない・させないための対策
飲酒運転をしない・させないための対策や法令による施策も実施されています。飲酒運転ドライバーへの罰則の強化や厳罰化したことを知らしめることにより、ドライバーの認識を高めることもその一つです。その他にも、車を業務で使用する法人に対して行われている、飲酒運転をさせないための対策がありますのでこちらでご紹介します。
安全運転責任者の選任が必須になった
2022年に道路交通法が改正され、乗車定員が11人以上の自動車一台以上またはそのほかの自動車5台以上の自動車の使用者は、自動車の使用の本拠ごとに「自動車の安全な運転に必要な業務を行う者」として安全運転管理者の選任を行うことが必須となりました。安全運転管理者に選任された人は、管理者として交通安全教育や運行計画の作成、日常点検や点呼などの業務を行います。
アルコールチェックの義務化
2023年12月からは、上記で選任された安全運転管理者によるアルコール検知器を用いた酒気帯び確認が義務化されました。アルコール検知器は、呼気中のアルコールを検知することで、その有無またはその濃度を警告音や警告灯で数値を示すことができる機器となっています。今回の法令改正により義務化が決められた具体的な内容は、安全運転管理者が運転前後の運転者の状態を目視で確認すること、酒気帯びの有無について検知器を用いて確認すること、アルコール検知器を常時有効に保持すること、アルコールチェックの記録と保存を一年間保管することが定められています。
アルコール・インターロックとは
アルコールインターロックとは、自動車の始動に関するシステムのことです。アルコール検知測定器と車の始動システムがつながっているため、エンジン始動前にアルコールインターロックで呼気を検知器で確認しますので、測定結果でアルコール検知内容の問題がないことを確認できないと、車のエンジンを始動することができません。アルコールインターロックシステムの日本での普及率はまだまだ高くないものの、トラック会社などでは最初から車に取りつけるなどすでに取り入れている会社もあります。車一台ごとに取り付ける費用とシステムの維持費用は安くはありませんが、トラックの業界団体の一部では購入補助の助成金をするなどされており、今後積極的に取り入れる会社が増える可能性も高くなっています。
まとめ
こちらでは、飲酒運転をしたドライバーに対する行政処分と罰則について詳しく解説しました。飲酒運転のドライバーが起こした交通事故による死亡事故件数は、減少傾向にあるもののいまだに発生していることから、厳罰化がすすめられています。飲酒する予定がある日は車両等の運転をしない、車両等の運転をしている日は誘われても断るという強い意識を持つことが大切です。