近年突然の降雪により、都市部でも積雪が1cmを超えることがあります。特に夜間は低下する気温によって道路上の雪が解けず、路面凍結や積雪により道路環境に大きな影響を与えることも少なくありません。
実は、雪道などのすべるおそれがある道路環境において、ノーマルタイヤで走行すると法令違反になってしまうことをご存知でしょうか。もしもノーマルタイヤで凍結した道路や積雪のある道路を走行すると、スリップを起こしたりタイヤがスタックして動けなくなってしまうなどが起こり、事故の原因となって他の交通の邪魔になってしまいます。こちらで詳しく解説します。
雪道でのノーマルタイヤ走行は法令違反!
雪道をノーマルタイヤの車で走行すると、どのような法令に則って違反となるのでしょうか。こちらでは運転者の遵守事項となる交通規則について解説します。
運転者が守らなければならない各都道府県の交通規則がある
まず、各都道府県の公安委員会の道路交通法施行細則または道路交通規則の運転者の遵守事項として、【積雪や路面の凍結によってすべるおそれがある道路において、自動車または原動機付自転車を運転する時は、タイヤチェーンを取り付ける等してすべり止めの措置を講ずること】は守るべき事項として取り決められています。
下記は、二都府の道路交通規則から抜粋した該当する法令部分です。
東京都道路交通規則
第8条 法第71条第6号の規定により、車両又は路面電車(以下「車両等」という。)の運転者が遵守しなければならない事項は、次に掲げるとおりとする。…
(6) 積雪又は凍結により明らかにすべると認められる状態にある道路において、自動車又は原動機付自転車を運転するときは、タイヤチェーンを取り付ける等してすべり止めの措置を講ずること。
大阪府道路交通規則
第13条 法第71条第6号の規定により車両等の運転者が遵守しなければならない事項は、次に掲げるとおりとする。…
(7) 積雪又は凍結のため滑るおそれのある道路において自動車を運転するときは、タイヤチェーンを取り付ける等滑り止めの措置を講ずること。
上記のほかにも、全国の各都道府県公安委員会の交通規則において、雪道などでは冬用タイヤ等の防滑措置をとるように取り決められています(沖縄県を除く)。
雪道をノーマルタイヤで走行すると反則金が適用される
上記でご紹介したように、法令により凍結等によりすべるおそれがある雪道などでは、タイヤチェーン等の防滑措置をせずにノーマルタイヤで走行してしまうと規則違反行為となり、以下の反則金が適用されます。
自動車の種類 | 反則金 |
---|---|
大型車 | 7,000円 |
普通自動車 | 6,000円 |
自動二輪車 | 6,000円 |
原動機付自転車 | 5,000円 |
雪道をノーマルタイヤで走ると危険な理由
雪道をノーマルタイヤで走行すると、どのような危険があるのか詳しく解説します。
路面凍結でスリップする可能性はかなり高い
すべり摩擦係数という数値の指標についてご存知でしょうか。すべり摩擦係数とは、タイヤと路面の接触面にはたらくブレーキ時の摩擦力と、接触面に垂直に作用する圧力(荷重)との比例定数のことです。摩擦係数は、摩擦力の数値から荷重の数値を割って算出することができます。
ノーマルタイヤを装着し、舗装した道路が以下の状態で走行した想定で、算出された摩擦係数が右部の数値となります。道路状態により摩擦力が弱くなるほどすべり易くなるため、路面凍結した道路ではかなりスリップしやすいことが分かります。
道路の状態 | 摩擦係数(単位:μ) |
---|---|
乾いた道路 | 0.8前後 |
濡れた道路 | 0.4~0.6 |
粉雪、粒雪の積もる道路 | 0.25~0.35 |
粒雪の下層が凍結道路 | 0.2~0.3 |
凍結道路 | 0.15~0.2 |
積雪にスタックして車が立ち往生
また、雪道では前述のようにスリップするだけでなく、スタックする可能性もあります。スタックとは、ぬかるみや雪などにはまって、自動車が立ち往生してしまう状態のことです。
雪道でのスタック(立ち往生)の要因は様々です。いくつか要因となった例をご紹介します。
タイヤがスリップしてしまい前にも後ろにも進めない
車が新雪の柔らかい雪に埋もれてしまい動けない
側道にたまった雪の塊に車が乗り上げてしまい動けない
スリップして道路脇に片方のタイヤが脱輪し動けない
雪道でスタックした時の対処方法
車で走行中、雪にスタックして前進を試みてもタイヤが空転して前に進まない場合は、まずはゆっくりバックをしましょう。バックができた分、少し前進します。このように小刻みにゆっくりバック・前進と繰り返し、雪を踏み固めながら発進します。ふりこの動きが大きくなることで、前進して脱出できることがあります。
タイヤの前後が雪に埋もれてしまっている場合は、前後の雪をスコップで取り除いたり、足で踏み固めるなどすると脱出がしやすくなります。脱出を試みるときは、周りの交通状況に応じて安全に行うようにします。また、どうしても脱出が難しい場合は、保険会社のロードサービスやJAFなどに救出依頼しましょう。
ノーマルタイヤでも法令違反にならないタイヤチェーンの取付け方
関東地方の太平洋側や東海地方などでは例年積雪自体が少ないため、冬用タイヤを準備していない方も多いでしょう。普段はノーマルタイヤを使用していても、突然の積雪に見舞われた時や外出先で雪道に遭遇した時、安全に運行するために防滑措置をとれる装備を事前に用意しておくことをおすすめします。
タイヤチェーンを事前に準備して車に積載しておく
ノーマルタイヤのまま、雪道などすべるおそれがある道路を走行すると法令違反になる旨をご紹介しました。この道路交通規則の法令にも記載があるように、タイヤチェーンなど防滑措置をとっておけば、法令違反にならず安全に雪道での運行が可能になります。
どんなタイヤチェーンでもOK?
タイヤチェーンにはいくつか種類があります。道路運送車両の走行装置等の保安基準で【タイヤチェーン等は走行装置に確実に取り付けることができ、かつ、安全な運行を確保できるもの】と決められています。カー用品店等で販売されているものであれば特に問題はなく、金属チェーンタイプ・ウレタン&ゴムチェーンタイプ・布製カバータイプなども使用可能です。ただし、タイヤに薬剤をスプレーで吹き付ける防滑措置などは、走行装置に装備を取り付けているとはならないため、高速道路のチェーン規制時などでは通行できません。
ノーマルタイヤにタイヤチェーンを自分で取付る方法
こちらでは、比較的簡単に取り付けがしやすい非金属製のウレタン&ゴムのタイヤチェーンの取付手順をご紹介します。タイヤチェーンの取付位置は駆動方式によって異なりますが、一般的には駆動輪に取り付けることがほとんどです。駆動輪とは、ブレーキペダルを踏むとブレーキがかかるタイヤのことです。タイヤチェーンを取り付ける際は、安全な場所で軍手等を用意して怪我をしないように行います。
- ハンドルを切らずタイヤをまっすぐにした状態で車を停車する
- タイヤチェーンを地面で平らに広げて、装着できるように準備
- タイヤの裏側にタイヤチェーンを回しこむ
(スパイク面が上、ジョイント接続部分が手前側にくるようにすること) - タイヤチェーンの両側を持ちスパイク面が外側になるようにタイヤに沿って持ち上げる
- 持ち上げた両端のジョイント部分、他のジョイント部分を各自接続する
- 最後にハンドルロックで締めてチェーンを固定し、たるみをとる
タイヤチェーンはカー用品店やインターネットのオンライン販売等で購入が可能ですが、タイヤサイズに適合するものを買わなければ、たるみがでたりタイヤや車を傷つけてしまうことがあります。適合するかどうか必ず確認しましょう。非金属製タイヤチェーンはメーカーによってジョイント部やハンドルロック部などの作りが異なりますので、各説明書も必ずご覧ください。
まとめ
こちらの記事では、ノーマルタイヤで雪道を走行すると法令違反となってしまうことを解説しました。例年は雪が積らないような地域でも、突然の降雪により雪道になったり、路面が凍結してしまうこともあります。
雪道を車で走行する機会がある時も、法令違反にならず安全に運行するため、タイヤチェーンを用意しておきましょう。また、タイヤチェーンや冬用タイヤを取り付けていても、雪道でスタックしてしまう可能性もあります。その際は、ご紹介したスタック時の脱出方法もぜひ参考にご覧ください。