新車の製造完了時にメーカーでは完成検査終了証を発行します。新車の新規登録時に完成検査終了証があれば、書類のみで登録申請をすることが可能になり、車検に通す手間が省けます。しかし、終了証発行から9カ月以内に自動車の新規登録をする必要があり、もしも期間を過ぎてしまった場合は再度検査を受けなくてはいけません。そのため、見込み生産で製造された新車も製造完了から9カ月以内に販売ができなければ、ディーラーが名義登録を行う場合があります。名義登録済の車は新規登録が済んでいる状態となるため、新車と呼ぶことはできません。
こちらでは、「実車走行はしていないが届出は済ませている未使用車」について、未使用車のメリットやデメリット等詳しく解説します。
未使用車と新古車の違いについて
公道を走行したことはない未使用車であっても、名義登録済の車を新車と呼ぶことはできません。一般消費者に乗られていない車の状態は新車同然ですが、名義上と法律的には中古車として扱われます。
このように、未使用で名義登録のみ行われている車は、販売店では届出済未使用車、または新古車と呼ばれることがあります。
未使用車・新古車という呼び方について
新車状態に近しい中古車であることから、以前までは中古車販売店など多くの店舗で新古車として販売されることが多くなっていました。しかし、「新古車」という呼び方が新車なのか、中古車なのかの区別がつき難いということで、現在は「自動車公正取引協議会」が消費者の勘違いを防ぐため、「新古車」は不当表示であるとして各自動車販売店に指導を行っています。ただし、自動車公正取引協議会は行政機関ではなく、「新古車は不当表示である」ということも強制はできません。身内ルールのようなもので、自動車公正取引協議会に非加盟のお店は制限もされていませんので、新古車という呼び方をしても法律違反や違法として取り締まりにあうことはありません。しかし、景品表示法に抵触する可能性は0ではなくリスクを避けるため、新古車という表記で販売を行っているお店は少ないようです。
先述の理由により、使えなくなった「新古車」に代わる呼び方として、「届出済み未使用車」と表記されていることが多くなっています。言い方が異なるだけで、意味合いはほぼ同じと考えて良いでしょう。ほかには「未使用中古車」と、より具体的な呼び方をする場合もあります。また、今は届出済み未使用車という表現が一般的ではあるものの、伝わらない消費者に対しては、新古車と口頭説明しているお店は今も多くあります。
自動車公正取引協議会について
日本の自動車取引業者が構成している一般社団法人で、行政機関ではありませんが、元々は内閣府「公正取引委員会」の所管であったため、自動車販売業者に対して、大きな影響力を持ちます。
設立目的はその名の通り、自動車の販売に際して公正な取引が行われるよう監視・管理することです。「新古車」という表記ができなくなったのもその一環と言えるでしょう。
近年では、運転支援・自動運転機能についての標示に関する運用の見直しを公取協で行っており、自動ブレーキのテレビ・ラジオCMでの用語使用を禁止し、運転支援技術レベル2の技術に対する自動運転技術の用語使用を禁止する等の活動を行っています。
未使用車のメリットについて
では、お店で販売されている届出済み未使用車のメリットとはどんなことがあるのでしょうか。
車のコンディションは新車と同等である
まず、第一に車のコンディションは新車と同等であるという点がいえるでしょう。走行距離といってもディーラー敷地内での移動程度で、公道を走行していないため走行距離は数10キロ前後です。登録のみで公道での使用は行われておらず、店舗状況次第では倉庫保管や室内保管である可能性もあります。
新車より車両価格が安い
届出済み未使用車は中古車となりますので、新車販売価格と比べると約10~20万円ほど安くなっている場合が多くなります。登録済の未使用車はベースグレードではなく、カスタムなど上位グレードも多くなっているため、新車での購入価格が高くなりやすい上位モデルの初期購入費用を抑えたいという方にとってお得な車両価格となっています。
法定費用が新車よりも安い
届出済み未使用車は既に新規車検を取っている状態での販売になりますので、車検時に納める自動車重量税は支払い済みの状態です。また、前述のとおり中古車としての販売価格は新車よりも安くなっているため、自動車取得時に課税される自動車税環境性能割も安くなります。
納車が早い
届出済み未使用車は、ディーラーが名義登録済で既に在庫として保有している車ですので、納車までの時間がかかりません。半導体不足や新型ウィルスの感染拡大による人員不足などの影響を受け、問題となっている納期遅れに関しても、すでに在庫があるためすぐに納車される未使用車を選ぶ方は多くなっていて、新車以上の人気になっている場合もあります。
未使用車のデメリットについて
ここまでメリットをお伝えしてきましたが、お店で販売されている届出済み未使用車にはデメリットもあります。
グレードやオプションを選べない
未使用車は在庫としてある車になりますので、好きな車種・カラー・グレードといった基本的な部分を選択することもできませんし、メーカーオプションなどの後付けできないオプションは付けることができません。在庫がある中からしか選べないため、特にボディカラーに関してはベーシックな人気カラーのみとなり、珍しいビビッドなカラーなどは選ぶことが難しいでしょう。
諸費用が高く設定されている場合がある
新車の場合の諸費用は店舗の差はあまりありませんが、未使用車は中古車と同様に販売店により諸経費に大きな差が生まれることがあります。
新車よりも車検の残り期間が短い
新車の場合は購入時に車検をしますので一律ですが、未使用車の場合は過去に車検をしていて購入したタイミングによって車検の残り期間が変わりますので、注意が必要です。
売却時にワンオーナー車扱いにならない
未使用車は過去に使用していた人がいないたけで、先にディーラーなどが所有者として登録されているので、車を売却する際に査定に多少響く可能性があります。
未使用車・新車・中古車の比較
購入時の価格でいうと、新車・未使用車・中古車の順に販売価格は高くなります。こちらでは、車の購入を考えているユーザーにとって、得か損かを比較して表にまとめました。
お得なポイントは○、損と感じるポイントは×、どちらもあり得る場合は△になっています。
未使用車・新車・中古車の比較表
比較項目 | 未使用車 | 新車 | 中古車 |
車のコンディション | ○ | ○ | △~× |
車両価格 | ○~△ | × | ○ |
法定費用 | ○ | × | ○ |
納車期間 | ○ | × | ○ |
カスタマイズ性 | × | ○ | × |
諸費用 | ○~× | ○ | ○~× |
車検期間 | ○~× | ○ | ○~× |
売却時の条件 | △ | ○ | △~× |
新車はどの項目もはっきりとしていますが、未使用車と中古車は購入するタイミングや販売店によって、お得の度合いが違ってきます。悪質な販売店の場合は、未使用車よりも同じ車種の新車の方が総額が安くつく場合もあるので、販売店の裁量による所が大きい諸費用などは内訳をよく確認し、相場と比べましょう。
まとめ
未使用車にはやはりデメリットもあるものの、それを上回るだけのメリットもあると思います。
車を買い換えたり、新しく買おうと考えている方は、新車や中古車だけでなく、未使用車も選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。