個人事業主が事業で使用している車の車検代は、事業で使用している部分について必要経費にできます。仕事と私用の両方で同じ車を使っている場合は、車検代の全額ではなく、事業で使用している割合に応じて経費にします。
また、車検代には点検・整備費だけでなく、自動車重量税や自賠責保険料、車検代行手数料などが含まれます。確定申告をするときは、請求書や明細書で内訳を確認し、それぞれの費用に応じた勘定科目で記帳しましょう。
本記事では、車検代を経費にできる条件や家事按分の考え方、費用ごとの勘定科目、消費税の扱いについて解説しています。まずはポイントを確認し、気になる部分から読み進めてみてください。
- 車検代を経費にできる場合:個人事業主が事業で使用している車は、事業に必要な部分の車検費用を必要経費にできる
- 仕事と私用を兼用する場合:走行距離や使用日数などをもとに事業割合を決め、事業で使用した分だけを家事按分して経費にする
- 按分の例:経費の対象となる車検費用が10万円で、事業割合が40%の場合、必要経費にできるのは4万円
- 車検代の主な勘定科目:車検代をまとめて処理せず、請求書や明細書で内訳を確認して記帳する
- 点検・整備・通常の修理:車両費・修繕費など
- 自動車重量税・国などに納付する検査手数料:租税公課など
- 自賠責保険料:損害保険料
- 車検代行手数料:支払手数料など
- 車検代が10万円以上の場合:10万円を超えたという理由だけで、車検代の全額を減価償却するわけではない
- 通常の修理:故障した部分を直す、消耗した部品を交換するなど、車をこれまでどおり使うための修理は修繕費になるのが基本
- 車の価値を高める支出:性能を高めたり、使用できる期間を延ばしたりする支出は、複数年に分けて経費にする場合がある
- 消費税の扱い:消費税を申告する事業者は、車検代に含まれる費用ごとに消費税区分を確認する
- 原則として消費税がかかる費用:整備・修理費や車検代行手数料など
- 整備費とは扱いが異なる費用:自賠責保険料や自動車重量税など
車検代は経費にできる?
個人事業主は事業で使用する車の車検代を経費にできる
個人事業主が事業で使用している車の車検代は、事業に必要な部分を必要経費にできます。
国税庁は、事業所得などの必要経費について、収入を得るために直接必要な費用や、その年に生じた販売費・一般管理費などの業務上の費用としています(出典:国税庁「No.2210 必要経費の知識」)。
たとえば、商品の配送や取引先への訪問など、事業のために使用している車であれば、車検にかかった費用も事業に必要な費用として処理できます。
一方、事業には使わず、家庭用としてのみ使用している車の車検代は、個人事業の必要経費にはできません。
仕事と私用で兼用する車は家事按分する
1台の車を仕事と私用の両方で使っている場合は、事業で使用している部分だけを必要経費にします。
国税庁は、家事と業務の両方に関係する費用について、取引の記録などに基づいて業務上直接必要な部分を明確に区分できる場合、その区分した金額を必要経費にできるとしています(出典:国税庁「No.2210 必要経費の知識」)。
たとえば、事業で使用している割合が40%で、経費の対象となる車検費用が10万円だった場合、事業分は4万円です。
事業割合は一律に決まっているわけではありません。走行距離や使用日数など、事業でどの程度使用したかを合理的に説明できる基準で区分しましょう。
会社員の自家用車の車検代は原則として必要経費にはできない
会社員が自家用車の車検代を、自分の必要経費として確定申告することは基本的にできません。
会社員は、個人事業主のように仕事でかかった費用を一つずつ必要経費にする仕組みではなく、給与所得を計算するときに「給与所得控除」が適用されます。
一定の仕事上の支出を対象とする「特定支出控除」という制度もありますが、通常の自家用車の車検代をそのまま必要経費にできる制度ではありません。
車検代の勘定科目は費用の内訳によって異なる
車検代は、すべてを同じ経費として記帳するのではなく、何に支払った費用なのかによって分けて記帳します。
たとえば、点検・修理費、自動車重量税、自賠責保険料では、使う勘定科目が異なります。以下は一般的な分け方の例です。
| 車検で支払う費用 | 主な勘定科目 |
|---|---|
| 点検・整備・通常の修理 | 車両費・修繕費など |
| 自動車重量税 | 租税公課 |
| 国などに納付する検査手数料 | 租税公課など |
| 自賠責保険料 | 損害保険料 |
| 車検業者への代行手数料 | 支払手数料など |
使用する勘定科目は事業者によって異なる場合があります。同じ内容の支出については、継続して同じ勘定科目を使うと管理しやすくなります。
点検・整備・修理費は車両費や修繕費
車検時の点検・整備や、故障した部分を元の状態に戻すための修理にかかった費用は、「車両費」や「修繕費」などで処理します。
たとえば、車検に伴う点検費用や、消耗した部品を交換する費用などです。
ただし、修理の内容によっては、その年に全額を経費にするのではなく、複数年に分けて経費にする場合があります。詳しくは後述する「車検代が10万円以上でも必ず減価償却するわけではない」で説明します。
自動車重量税などは租税公課
車検時に支払う自動車重量税は、「租税公課」で処理します。
自動車重量税は車検時に発生する法定費用のひとつです。具体的な税額は車両重量や経過年数、減免措置の適用などによって異なるため、車検代の明細で実際に支払った金額を確認してください。
自賠責保険料は損害保険料
車検時に支払った自賠責保険料は、「損害保険料」で処理します。
自賠責保険は、自動車を運行する際に加入が義務付けられている保険です。車検を受ける際には、車検の有効期間を満たす自賠責保険への加入が必要になります。
車検代行手数料は支払手数料
整備工場や車検業者などに車検手続きを代行してもらった費用は、「支払手数料」などで処理します。
車検の請求書では、点検・整備費と代行手数料などが分かれて記載されていることがあります。領収書だけで総額を見るのではなく、明細書も保存しておくと、それぞれの費用を分けて記帳しやすくなります。
車検代が10万円以上でも必ず減価償却するわけではない
車検代が10万円を超えても、それだけで減価償却が必要になるわけではありません。
「10万円未満」という金額は、減価償却する資産を購入した場合の扱いに関係する基準です。車検代そのものに「10万円を超えたら減価償却する」という基準があるわけではありません(出典:国税庁「No.2100 減価償却のあらまし」)。
車検代には、点検費や税金、保険料、修理費など、いろいろな費用が含まれています。そのため、まずは車検代の総額ではなく、何にいくらかかったのかを確認します。
故障した部分を直す、消耗した部品を交換するなど、車をこれまでどおり使うための修理であれば、修繕費としてその年の経費にできるのが基本です。
一方で、車の性能を大きく高めたり、使用できる期間を延ばしたりするための支出は、通常の修理とは扱いが異なります。その年に全額を経費にせず、資産として計上して複数年に分けて経費にする場合があります。税務上、このような支出を「資本的支出」といいます(出典:国税庁「No.1379 修繕費とならないものの判定」)。
なお、国税庁では、修理や改良の金額が20万円未満の場合など、修繕費として処理できる一定の基準も示しています(出典:国税庁「No.1379 修繕費とならないものの判定」)。
そのため、車検代が10万円を超えたときは、「10万円を超えたか」ではなく、「通常の修理なのか、車の価値を高めるような支出なのか」を確認して判断しましょう。
車検代を確定申告するときの処理

車検代を経費にするときは、何に支払った費用なのかを確認して帳簿に記録します。
車検代をひとまとめにするのではなく、点検・修理費、税金、保険料、代行手数料などに分けて記帳します。仕事と私用で車を兼用している場合は、事業で使用した分だけを経費にします。
確定申告の時期になってから内訳が分からなくならないように、車検時に受け取った請求書、明細書、領収書などは保管しておきましょう。
青色申告・白色申告では事業分の車検費用を記録する
青色申告でも白色申告でも、経費にする車検代は帳簿に記録しておく必要があります。
車検代をひとまとめにするのではなく、点検・修理費や税金、保険料などに分けて記帳します。仕事と私用で車を兼用している場合は、家事按分した後の事業分だけを経費にします。
確定申告では、青色申告の場合は青色申告決算書、白色申告の場合は収支内訳書に、その年にかかった経費をまとめて記載します。
たとえば、点検・整備費を「車両費」で記帳している場合は、車検以外で発生したガソリン代や整備費など、同じ「車両費」で記帳した事業上の費用と合わせて集計します。
家事按分した場合は事業分だけを必要経費にする
仕事と私用を兼用している車の場合は、家事按分した後の事業分だけを必要経費にします。
たとえば、経費の対象となる車検費用が10万円で、事業での使用割合が40%であれば、必要経費にできるのは4万円です。残りの6万円は私用分となるため、必要経費には含めません。
按分するときは、走行距離や使用日数など、実際の車の使い方をもとに事業分を説明できるようにしておきましょう。
車検代の消費税は費用ごとに扱いが異なる

消費税を申告する事業者は、車検代の内訳ごとに消費税の扱いを確認します。
車検代には、整備費や保険料、税金などが含まれており、すべてが同じ扱いになるわけではありません。請求書や明細書を確認し、それぞれの費用を分けて処理します。
消費税を申告する必要があるかを確認する
まず、自分が消費税を申告する必要がある事業者かを確認します。
個人事業主の場合、消費税の申告が必要かどうかは、現在の売上高だけで単純に決まるわけではありません。原則として前々年にあたる基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば納税義務が免除されますが、一定の条件に該当する場合や、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合は、1,000万円以下でも納税義務が免除されないことがあります(出典:国税庁「No.6501 納税義務の免除」)。
そのため、「売上が1,000万円以下だから消費税は関係ない」と判断せず、自分が消費税の申告対象かを確認してください。
整備費・自賠責保険料・税金では消費税の扱いが異なる
整備・修理費や車検代行手数料などには、原則として消費税がかかります。
一方、自賠責保険料は消費税の非課税取引です(出典:国税庁「No.6221 預貯金や貸付金の利子など」)。
また、自動車重量税の納付は、商品やサービスを購入したときの支払いとは性質が異なります。消費税を申告する事業者は、車検代をまとめて同じ区分にせず、明細を確認してそれぞれの費用に合った区分で処理しましょう。

まとめ
個人事業主が事業で使用している車の車検代は、事業に必要な部分を必要経費にできます。仕事と私用の両方で車を使用している場合は、走行距離や使用日数などをもとに事業分を家事按分します。
車検代には、点検・整備費、自動車重量税、自賠責保険料、車検代行手数料など、種類の異なる費用が含まれています。請求書や明細書を確認し、何に支払った費用なのかに応じて記帳しましょう。
また、車検代が10万円を超えても、それだけで減価償却が必要になるわけではありません。通常の修理なのか、車の価値を高めるような支出なのかを確認して判断することが大切です。




