ディーゼルの良さを保ちつつ、悪いところを解消した「クリーンディーゼル車」が注目されています。ガソリン車よりも環境に優しいのが特徴です。
けれども維持費が気になりますよね。ガソリン車とクリーンディーゼル車を比較してみましょう。
クリーンディーゼル車の維持費が優れている点
維持費には燃料代や税金、整備費用などがあります。その中でもクリーンディーゼル車が優れているのは燃料代です。
燃料代に含まれる税金の差が大きい
クリーンディーゼル車の燃料は軽油であり、ガソリンよりも1リットル当たり10~30円ほど金額に差があります。この違いはそれぞれに課せられる税金によるものです。
・1リットル当たりの税金(2020年12月現在)
ガソリン税(揮発油税及び地方揮発油税) | 53.8円 |
軽油引取税 | 32.1円 |
さらにガソリン税には消費税が課せられるという「二重課税」になっているため金額があがります。軽油は軽油取引税を除いた軽油の原価だけにしか消費税が課せられません。
他にも精製にかかる手間の違いも反映されていますが、ほぼ税額の違いが影響していると考えて良いでしょう。
クリーンディーゼルは燃費が優れている
さらにクリーンディーゼル車は燃費も優れています。ガソリン車よりも少ない燃料で、大きなパワーを生み出せるエンジンを搭載しているからです。
例えば比較的スペックが似ているモデルがラインアップされている、トヨタの「ランドクルーザープラド」で比較すると、以下のとおりとなります。どちらもフルタイム4WDの6速AT車(6SuperECT)で排気量はガソリン車が2.7L、クリーンディーゼル車が2.8Lです。
・ガソリン車(TX 2.7Lガソリン 5人乗り仕様)……8.3km/ℓ
・クリーンディーゼル車(TX 2.8L クリーンディーゼル 5人乗り仕様)……11.2km/ℓ
燃費の差に加えて燃料代の差もあります。2020年12月3日時点のガソリン価格で算出したガソリン代が122円で軽油が100円のため、1,000㎞走ったときの燃料代はガソリン120L分約14,640円、クリーンディーゼル車の場合は89L分8,900円です。
車にかかる税金もクリーンディーゼル車は有利
クリーンディーゼル車は他の税金でも有利です。平成21年排出ガス基準適合または平成30年排出ガス基準適合のクリーンディーゼル車は自動車税環境性能割(旧:自動車取得税)は非課税になります。
自動車税も、2019年4月1日から2023年3月31日までグリーン化特例措置の対象期間となっており、自動車税の減税措置が行われています。
そのためクリーンディーゼル車のなかでも平成21年度排出ガス基準適合又は平成30年度排出ガス基準適合を達成している乗用車は、特例措置により概ね75%の軽減になります。1,500㏄の車なら通常は34,500円ですから、75%で25,875円です。
また、自動車重量税においても令和2年4月1日時点での法令において、環境性能に優れた自動車等に対する自動車重量税の減免措置対象になっているため、令和元年5月1日から令和5年4月30日までの間に新規検査を受けて、自動車検査証の交付を受けるクリーンディーゼル車の自動車重量税は免税になります。(令和2年12月にグリーン化特例措置の期間の延長が決定されました)
2020年12月自民党から、2021年度の税制改正においてクリーンディーゼル車への自動車重量税一律免税措置の廃止予定が公表されています。
これはクリーンディーゼル車以上に、燃費や環境面へのプラスとなる電気自動車等への乗り換えを推奨するためで、現在のクリーンディーゼル車一律免税から、一部対象車の減税へと変更が検討されています。ただし、猶予も設ける予定となっており内容の発表が待たれます。
クリーンディーゼル車の維持費が劣っている点
一方クリーンディーゼル車は、維持費の中で整備費用がガソリン車よりも高い傾向があります。これはディーゼル車全般における、エンジンの仕組みに関するものです。
軽油を使用することにより維持費が高額になる理由
軽油は燃焼時に煤や黒煙が発生し、そのまま排出すると空気を汚してしまいます。そのためディーゼルエンジンには、これらの有害物質をキャッチする「DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)」が付いています。
ある程度汚れが溜まると自動的にクリーニングされますが、その際にエンジンオイルを使用するため、ガソリン車よりもエンジンオイルを頻繁に交換しなければいけません。ガソリン車のエンジンオイルは1年後か15,000km走行後が交換の目安ですが、ディーゼル車は半年後か5,000㎞走行後です。
また軽油には水分が多く混入しており、「セジメンタ」と呼ばれる除去装置が付いています。除去された水はそのまま溜まってしまうので、定期的に水抜きしなければいけません。いっぱいになると警告灯が表示されます。
アドブルー(尿素水)の補充が必要になることも
他にも車種によっては排ガス内の窒素酸化物を除去するために、「アドブルー(尿素水)」を必要とする場合があります。これもこまめに補充しなければいけません。
先ほど税金は優遇されると説明しましたが、ディーゼル車の自動車税は新車新規登録から11年経過すると重課措置があり、他の車よりも高くなるというデメリットがあります。この重課措置の適用は、たとえクリーンディーゼル車であっても同じです。
クリーンディーゼル車は維持費が安くても元は取れない?
クリーンディーゼル車は、車両本体価格がガソリン車よりも高いのが難点です。排ガスを基準値内に収めるための装備を搭載しているため、どうしても割高になってしまいます。例えば先ほどのトヨタ「ランドクルーザープラド」で比較すると、以下のとおりです(どちらも税込)。
・ガソリン車(TX 2.7Lガソリン 5人乗り仕様)……3,621,000円
・クリーンディーゼル車(TX 2.8L クリーンディーゼル 5人乗り仕様)……4,285,000円
両者には約70万円近い差があります。今回比較しているガソリン車はエコカー減税の対象なので、税金面でのアドバンテージはそれほどありません。
車両本体価格の差は燃料代で埋めるとすれば、先ほどは1,000kmで5,740円の違いでしたから、約12万km乗らないと元を取れない計算になります。クリーンディーゼル車は整備費用が多くかかるので、実際はもっと乗らなければいけないでしょう。
クリーンディーゼル車の維持費についてよくあるご質問
クリーンディーゼル車の維持費に関して、よくいただくご質問にお答えします!
Q.クリーンディーゼル車の維持費におけるメリットは?
A.クリーンディーゼル車の維持費においてメリットとなるのは、燃費が良く、ガソリン車に比べて安価になる軽油を使用することによってお得な燃料代です。軽油はガソリンに比べると税率が異なり、1リットル当たり10~30円ほどお得です。また、車にかかる税金もエコの観点から減税対象であったり免税対象車になっているためお得になっています。
Q.クリーンディーゼル車の維持費は高額って本当?
A.クリーンディーゼル車は、ガソリン車に比べると整備費用が高額です。定期的なメンテナンスは車の維持に必要なことです。特にクリーンディーゼル車はエンジンオイルを頻繁に交換する必要があったり、定期的な水抜きも必要です。
また、整備対応している工場がガソリン車に比べると少ないため、専門の工場やディーラーに依頼することとなり、一度故障や事故を起こしてしまうと修理に高額な費用が必要となることが予想されます。
Q.高額なクリーンディーゼル車を購入しても元は取れるの?
A.クリーンディーゼル車は車両本体価格もガソリン車に比べると高額ですが、燃費においてお得です。ただし、本体価格の両車両を購入した時の価格差を埋めるためには、購入から約10万~20万km走らなくては元を取ることは出来ないでしょう。
まとめ
クリーンディーゼル車の維持費の中で、燃料代と税金はガソリン車よりも優れています。一方、整備費用は高くなりがちです。何よりも車両本体価格に大きな差があるので、維持費だけで元を取るのは難しいでしょう。あくまでもディーゼルエンジンならではの走りと環境のために選ぶ車です。
いろいろな方向から費用面を確認し、自分の用途などをよく考えてから購入しましょう。
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