借金の返済が困難になったり、税金を滞納していたりすると財産を差し押さえられてしまうことがあります。
車が好きな人にとっては、車を失わないために何とかしたいと思うでしょう。
預金や不動産などを持っていなければ、車が差し押さえられるかもしれません。
差し押さえとはどのようにして行われるのか
差し押さえが行われる流れについて、借金やローンの場合と、税金の場合に分けて見ていきましょう。
借金やローンの返済が困難になったら
借金やローンを返済中の人が、失業などが原因で予定通りの返済を行うのが困難になる場合があるでしょう。債権者側が返済予定日に入金されていないことを確認すると、電話がかかってきたり、郵便物が送られてきたりします。この時点ではまだ差し押さえの手続きに入っておらず、すぐに財産を差し押さえられることはありません。
しかし、電話や郵便物を無視し続けていると、債権者は裁判所で支払督促を申し立てて、差し押さえの準備を行います。そうすると裁判所から支払督促申立書が送られてくるため、注意しなければなりません。
この支払督促申立書の内容に対して異議がある場合には、2週間以内に申し立てることが可能です。異議を申し立てずに2週間経過すると、債権者側の言い分が認められて、仮執行宣言付支払督促申立書が送られてきます。
この段階になると、債権者側はいつでも財産の差し押さえが可能な状態です。裁判所から「〇〇万円支払う」という内容の確定判決があった場合も、それ以降は財産を差し押さえられる状態になります。
差し押さえ可能な状態になれば、後は債権者側が裁判所に申し立てを行うだけです。執行官が財産を差し押さえにきます。また、差し押さえに入る前の段階で、和解に持ち込めば差し押さえを回避することも可能です。
税金の滞納処分の場合
税金の滞納処分として差し押さえが行われることもあります。この場合には国税徴収法や地方税法の規定に基づいて行われるため、裁判所を通さないのが特徴です。
税金の滞納があったことを税務署や市役所などが認識し、納期限から20日程度経過すると、督促状が送られてきます。それと併せて電話などで、滞納している税金を納めるように言ってくることも多いです。ここまでは借金やローンの場合とそう大きく変わりません。
督促状が送られてきて、電話などで納税を促されても納めずにいると、財産調査が行われます。財産を差し押さえる準備として、どんな財産を所有しているのか確認するのが目的です。
財産調査では給料や不動産、銀行口座、生命保険などについて調べられます。また、車を持っている場合には、車も調査対象です。勤務先や家族構成などについて調べられる場合もあります。
財産調査が終わると差し押さえを行います。裁判所を通さないことなどから、借金やローンの場合よりも差し押さえに至るまでの日数も短めです。納期限から2ヶ月程度で差し押さえられる場合もあります。
車は差し押さえられるのか
車を持っている場合に、差し押さえの対象になるかどうか見ていきましょう。
差し押さえの対象となる車は限られている
差し押さえは財産を現金に換えて、未返済の債務や滞納している税金の支払いに充てる目的で行われます。
そのため対象となる財産は、基本的には換金可能な全財産です。
ただし一定の制限があり、生活用品や仕事で使う道具などは差し押さえることができません。
車に関しては、普段の使用目的や地域の環境などにより差し押さえ対象になる場合とならない場合があります。
例えば自営業を行っており、仕事で車を使用しているような場合には、差し押さえの対象になりません。公共交通機関があまり充実していない地域で、車がないと生活が困難な場合にも、差し押さえの対象外になることがあります。
また、差し押さえはあくまで現金に替えることを目的として行われるため、経済的価値の低い財産は対象になりません。車の場合には、売却の際の査定額が20万円以上なら、差し押さえ対象になります。そのため、古い車の場合には差し押さえられないケースが多いです。
差し押さえ対象の車でも差し押さえられないこともある
財産の差し押さえを行う際には、債務者本人が所有している財産のみを対象にしなければなりません。家族などが所有している財産は対象外です。車に関しては、所有者と使用者が異なる場合もあるため注意しましょう。
たとえ債務者が普段から使用している車でも、債務者以外の人が所有している車であれば、差し押さえることはできません。
また、債権者側は差し押さえる財産の所在を確認した上で、差し押さえ手続きを行う必要があります。債務者が車を所有していることを知っていても、その車がどこに置かれているのか分からない場合には差し押さえできません。自宅の敷地内に駐車していればすぐに分かりますが、他の駐車場などに駐車している場合には、探す必要があります。
車以外の財産を差し押さえることで、未返済の債務に充当して足りた場合にも、車は差し押さえられません。どの財産を差し押さえるのか決めるのは債権者側ですが、通常は現金や預金、給与などを優先します。車は売却手続きを経ないと現金化できないため、差し押さえられないことが多いです。
また、マイカーローンの支払いが困難になった場合には、ローン会社から車を引き上げられます。これを差し押さえと勘違いしてしまう人もいますが、差し押さえとは異なるものです。もともとローン会社が所有者で、ローン完済後に所有権が自分に移る仕組みになっています。引き上げられてしまった場合には、基本的に取り戻すことはできません。
今後の生活再建のために出費を見直そう
運良く車を差し押さえられなかった場合でも、ローンや税金を支払えなくなる状況に陥ったのであれば、今後これまで通りの生活をするのは厳しいでしょう。
生活再建のために出費を見直す必要があります。
車にどのくらいお金を使っているか把握する
車はかなり維持費がかかるため、車にどのくらいのお金を使っているのか洗い出してみましょう。車の維持費として、自動車税、自賠責保険料、重量税、車検代は必ずかかります。たいていの人は任意保険料もかかっているでしょう。メンテナンス費用や洗車代、ガソリン代も軽視できません。都市部では駐車場代も高額です。
1年間の車に使っているお金を合計すると、安くても20万円は超えます。概ね30万円程度使っている人が多いです。維持費の高い車に乗っている人や、車を使用する頻度が高い人であれば、40万円から50万円くらい使っているかもしれません。
もし給与を差し押さえられてしまったのであれば、これまで通り車の維持費を捻出するのが難しくなるでしょう。通常、手取り額の4分の1まで差し押さえることが可能であるため、これまで手取り24万円だった場合には、18万円になってしまいます。
無理に車の維持費を捻出しようとすると、生活に支障が出てしまうかもしれません。また、差し押さえに至る状況になった理由が、車の維持費が高すぎるためという人もいるのではないでしょうか。
生活再建のために車を手放すことも視野に入れる
生活再建のためには、出費を減らさなければなりません。基本的に趣味や娯楽などに使っている金額を優先的に減らすことになります。一番に見直さなければならないのは、車にかかっている費用でしょう。
車がなくても生活に大きく支障が出ないのであれば、車は手放すのが望ましいです。公共交通機関が充実している都市部に住んでいるのであれば、車がなくても生活するには困りません。
地方などで車がないと生活が困難なのであれば、なるべく維持費の安い車に買い替えましょう。趣味性の高いSUVや大きなミニバンなどに乗っているのであれば、軽自動車に買い換えるだけで、維持費を大幅に節約できます。
まとめ
ローンや税金の滞納で財産の差し押さえをされても、車が対象になるとは限りません。
古い車であれば、経済的価値もあまりないため差し押さえられないケースが多いでしょう。
しかし、生活再建のために車の維持費を見直してみることをおすすめします。