信号待ちや渋滞などで一時的に車両を停車するとエンジンが自動的に停止する機能を、「アイドリングストップ」といいます。
また、ブレーキを踏み込んで減速動作に入り車両のスピードが約8km/hになると、エンジンが自動的に停止する停車前アイドリングストップ機能もあります。
アイドリングストップは、2021年現在新車の車の中には標準装備の車と、非搭載車どちらも販売されており、購入する側で搭載車か非搭載車か選べるようになってきました。
こちらでは、アイドリングストップの機能について、メリットやデメリットはあるのか、アイドリングストップ機能をキャンセル出来るアイドリングストップキャンセラーについても合わせて解説します。
車のアイドリングストップとは
アイドリングストップの「アイドル(idle)」には「活動していない」という意味があります。そこから転じて、エンジンがかかったまま車が停車している状態を「アイドリング」と呼ぶようになりました。
アイドリングストップとは、車両が一時的に停車しているとエンジンが自動的に停止する機能のことです。
アイドリングストップを使用することで不必要な燃料の消費を抑えて節約することが出来、排気ガスの排出量を減らし、アイドリング中の騒音も防ぐことが出来るようになります。
アイドリングストップの歴史
戦時から戦後にかけて燃料の節約のために、停車中のアイドリングが始まると手動でエンジンを止めることを自動車メーカーが励行していた時代がありました。
その後、車が停車すると自動的にエンジンも停止することが出来るアイドリングストップ機能が開発されたのです
停車時のアイドリングストップと走り出す時のエンジン再始動が可能なアイドリングストップを初めて搭載した乗用車は、トヨタのクラウンと言われています。
かつてはエンジンの性能が低く、いきなり車を走らせるとエンジン内部にトラブルが起きやすくなったり、加速性能が追い付かずスピードが出ない原因になると考えられていました。
しかし、近年のエンジンは性能が向上しているだけでなく、電子制御によってエンジンをかけた直後でも十分に作動出来るようになっています。
普通乗用車の場合、暖機運転によるアイドリングが必要となるのは、寒冷地など外気温が低く、水温計が上がり出すまで暖めることに必要なくらいでしょう。
けれども信号待ちや渋滞で一時的に車両を停車するときは、意図せずにアイドリングしている状態です。アイドリング状態でエンジンが空転すると燃料のロスになり、不要な排気ガスの排出もあるため環境にも優しくありません。
各メーカーごとのアイドリングストップ機能の名称
トヨタ:「Stop and Start System」「SMART STOP」
マツダ:「i-stop」
ダイハツ:「eco IDLE」
三菱自動車:「AS&G(Auto Stop and Go)」
アイドリングストップ機構の搭載車が登場するまではドライバーが自らアイドリングストップするように励行されていたこともありますが、停車時のエンジンストップの動作には問題がなくても、緊急車両等が後方から来た時に咄嗟に車を動かす必要が出来た時など、エンジン作動がスムーズに行うことが出来ない可能性が高くなります。
アイドリングストップ機構が開発されたのはおよそ1970年代です。その当時すでに、車両の停車時にエンジンが自動的に停まり、発進時に再始動する機能はあったものの搭載車両も少なかったのですが、2001年にエコカーに対する減税制度「グリーン化税制」が施行されたのをきっかけに様々な自動車メーカーから燃費が良く環境に優しい車がつくられるようになったことで、アイドリングストップ機構が標準装備されている車両も増えています。
アイドリングストップの仕組み
アイドリングストップはまずエンジンを始動し、エンジンが暖まった状態で車を走らせます。車速が20km/hを超えるとアイドリングストップ機能が作動できるようになります。
アイドリングストップはブレーキを踏み、車が停車してから約1秒後に作動します。ブレーキを踏み続けている間はアイドリングストップが働き、再度ブレーキから足を離したり、ハンドルを動かしたりするとエンジンが再始動する仕組みです。
メーカーによって仕様は異なりますが、ハンドル動作やブレーキから足を離すと、早ければ0.4秒でエンジンは再始動し走り出しが可能になります。
ただし、渋滞時などは短時間に始動と停車を繰り返す動作をすることになります。加速もあまり出来ないため8km/h以内の低速で前進と停車を繰り返しているような状況であれば、アイドリングストップのシステムが状況を判断し作動すべきかコントロールをしていくれる機能もついています。
CVTの副変速機をロックすることで、エンジン始動時に押し出されるような衝撃を軽減したり、上り坂を走行中に車がずり下がるのを防いでくれます。
車のアイドリングストップのメリット・デメリット
環境への配慮もありメリットが大きいと思われるアイドリングストップですが、デメリットもあります。むしろドライバーによってはメリットよりもデメリットのほうが多いかもしれません。
こちらでは、アイドリングストップのメリットとデメリットをご紹介します。
アイドリングストップのメリット
アイドリングストップの大きなメリットは、環境への配慮にもつながる燃料の節約と排出ガスの排出量の削減です
不要なエンジンの回転を停止する分、停車時の燃料の消費はなくなるため節約に効果があります。また、アイドリング中に排出されていた排ガスの排出自体も停まります。
停車時間というと、信号待ちの時間などになると思いますので決して長い時間ではありませんが、燃料の消費量でいえば10分停車していれば0.15~0.20リットルの節約になります。また、排気ガスの削減量は10分で70~100gと、こちらは環境配慮にも大きな意味がある数字となっています。
住宅地内や走行中にアイドリングしている車からの排ガスの匂いや、エンジンの空転する騒音が気になるという方も多かったと思いますが、その部分はアイドリング作動中はエンジンが停止しているため気にするこもなくなり、音も静かで驚かれた方も多いでしょう。
アイドリングストップのデメリット
環境への配慮といった面で大きなメリットがあるアイドリングストップですが、エンジンが停止することにより別に負担が発生することでデメリットもあります。
アイドリングストップ作動中に、エアコンやオーディオなどを利用していると、車はバッテリーに貯めていた電力を消費します。
エンジンが停止しているため、アクセサリーポジション(ACC)にするのと同様の状態となり、カーナビやオーディオは使えますが、エアコンが使えなくなります。最近はファンだけ回るよう改良が進められていますが、冷やしたり暖めたりすることはできません。四季があり気温変化の差が大きい日本では暑い日や寒い日はとても不便に感じます。
また、エンジン再始動の回数が増えるためバッテリーやオルタネーター、セルモーターに負担をかけることになります。
バッテリーの劣化スピードは通常の車の使用時に比べると早くなりますので、交換のタイミングも早くなることからメンテナンスや部品代がかかってきます。エンジンの再始動時の振動でゴム製の部品やベルト類も摩耗し、劣化が早くなりやすいでしょう。電源類のON/OFFも頻繁になり、車をコントロールするECUをはじめ電装部品の不具合が起こりやすくなります。
つまり交換や修理などに維持費が余計にかかるのです。
部品代でいうなら、アイドリングストップ搭載車は非搭載車グレードと比べると高額になります。それは、アイドリングストップ専用のスターターシステムを搭載する必要があるためです。燃料の節約が出来たとしても費用面でカバーは難しいでしょう。
そして何よりも運転に違和感があります。どんなにブレーキから足を離して0.4秒で再始動しても、微妙なタイムラグを感じるドライバーもいるようです。
ハイブリット車よりもガソリン車のほうがタイムラグは長くなります。慣れないと右折のときにタイミングよく車を動かせず危険です。
車によっては走行中にブレーキとアクセル操作を繰り返すと、そのたびにアイドリングストップと再始動も繰り返されるため、煩わしく感じるかもしれません。特にスポーツカーのような、操作によってフィーリングが変わる車に搭載されていると、運転を楽しむどころではなくなるでしょう。
アイドリングストップキャンセラーで機能停止
アイドリングストップは運転席周りのスイッチパネルにある「アイドリングストップOFF」のスイッチを押すことで作動事態をキャンセルできます。
このアイドリングストップの作動をスイッチ操作で切り替えることは一時的になり、エンジンを切ってしまうと再びかけたとき自動でスイッチがオンになります。運転するたびにキャンセルするのは面倒に感じるかもしれません。
アイドリングストップキャンセラーとはどんなもの?
そこでアイドリングストップキャンセラーを使い常時OFFにする方法があります。これでエンジンを切っても元に戻らず、アイドリングストップはキャンセルされた状態が続きます。
アイドリングストップキャンセラーは、アイドリングストップのOFFボタンと配線の間にキャンセラーを割り込ませて、常時OFFにする機能を追加する仕組みです。車両やメーカーごと対応する社外品のアイドリングストップキャンセラーが製造販売されています。販売されている価格の相場は2,000~7,000円前後で、カーショップやオンライン通販などで購入できるようです。取り付けにはドライバーやペンチ、ニッパーなどの工具が必要となり、多くのアイドリングストップキャンセラーには説明書に何色の配線がどの機能を持っているか書かれていますが、分からない場合はテスターを用意して確認したほうが無難でしょう。途中で配線を切断したり、割り込ませたりする作業が発生しますが、コネクタ式なら被覆を剥かなくても簡単に接続できます。1時間もあれば作業は完了するようです。
なお、アイドリングストップキャンセラーを取り付けていても継続車検時には問題なく通りますが、ディーラー車検の場合アイドリングストップキャンセラーを付けているとNGになる場合があるようです。
アイドリングストップ非搭載車の購入は可能?
アイドリングストップキャンセラーを付けなくても非搭載車を購入すればいいと考える方もいらっしゃるでしょう。ただ、2021年現在はアイドリングストップ搭載が標準装備の車がほとんどです。特に5月以降のエコカー減税制度に関わる燃費達成基準を見ていると、さらに厳しい水準となっています。アイドリングストップが燃費を良くすることは確かですので、標準装備となる車はさらに増えていくでしょう。
アイドリングストップ機能は搭載されているが、乗り心地への影響や電装品とのバランス上作動を停止したいという方で、アイドリングストップキャンセラーの取り付けに不安がある方は、工賃はかかりますがカーケア用品店などで購入と取り付けを合わせて依頼されることをおすすめします。
アイドリングストップ搭載設定がもとよりない新車も販売はされています。
特に2020年にトヨタ自動車が販売し、世界共通名となった新型ヤリス(日本名は以前はヴィッツ)のガソリン車モデルは、アイドリングストップが非搭載になっており話題となりました。
アイドリングストップキャンセラーは査定に響く?
車の売却をする際に、アイドリングストップキャンセラーを取り付けている状態の場合、査定業者次第ではマイナスになることもあります。アイドリングストップキャンセラーを取り付けるには、買取前にキャンセラー自体は取り外したとしても、配線を切断しているので元に戻すためには手間が発生します。買取業者によっては、このようにアイドリングストップキャンセラーをつけていた後というだけでもマイナスになってしまうのです。
もしも純正配線を切りたくない、売却時のために戻せるようにしておきたいという方は、カプラーオン製品になっているアイドリングストップキャンセラーを選ぶことをおすすめします。カプラーオン製品の場合、もともとの配線に割り込ませてつなげるカプラーがセットされているため、取り付け自体も簡単ですし、配線を切断する必要がないため不要になり取り外しても元の状態に戻すことが簡単になっています。ただし、カプラーオンではない製品と比べると高額にはなってしまいます。少し価格は高くなりますが、車を乗りつぶさないのであれば購入を検討してみるのも良いでしょう。
アイドリングストップに関するよくあるご質問
アイドリングストップに関して、ユーザーが疑問に思うこと、よくいただく質問にこちらでお答えします。
Q.アイドリングストップ搭載の車を買うべきか悩んでいます。購入メリットは大きいのでしょうか?
A.アイドリングストップの車は、燃費向上率でいうと普段1分以上停車する機会があるという方は燃費コスト面でもお得になるようです。都市部にお住まいで交差点や横断歩道、踏切などが多く体感時間として停車時間が長く感じる道路をよく運行する方であれば、燃費効率で考えると購入するメリットはあるでしょう。また現在はアイドリングストップが標準装備の車も多く、専用のバッテリーを搭載しているためもともとの車両価格も少し高い傾向にあります。
Q.レンタカーがアイドリングストップ搭載車でした。運転の仕様が普段と異なるので不安定に感じます。作動しないように出来ますか?
A.レンタカーでは車種などで選ぶことは出来るものの、アイドリングストップ搭載かどうかまでは確認に至らないことも多いですよね。普段乗られている車との差が気になるという方は、アイドリングストップのスイッチ切り替えで作動を止めても特に問題はないでしょう。アイドリングストップの頭文字であるAとOFFがセットになったスイッチが、一般的なアイドリングストップのOFFボタンとなります。アイドリングストップ機能をスイッチでOFFにしても、エンジンを再始動すればONに戻ります。※ただしアイドリングストップ機能の切り替えをすることをレンタカーの会社が了承していない場合もあります、機能上はあくまでも切り替え可能ですが、問題がないか前もって聞いておきましょう。
Aを矢印で丸く囲み、下にOFFと記載があるスイッチが一般的なアイドリングストップオフスイッチになっています。メーカーによってはアイドリングストップシステムの名称が違っていることもあり、ダイハツのエコアイドルならスイッチもecoIDLEOFFになっていいたり、マツダのようにi-stopOFFボタンになっているものもあります。日産自動車の場合は、IDLING-STOPというスイッチが切り替えのスイッチになります。
Q.アイドリングストップ搭載ではない車を購入したいと考えていますが、おすすめはありますか?
A.2020年2月にフルモデルチェンジし販売が開始されたトヨタのヤリスは、アイドリングストップ非搭載の車です。ガソリン車のエントリーモデルは139万円台からとなっており、コンパクトカーの中でもお手頃な価格設定です。ガソリン車でWLTCモードの燃費は20.2km/L、安全技術性能の高さで知られているToyotaSafetySenseの装備も搭載されています。環境性能割1%軽減対象車のため、12月31日までの購入であれば税金面で優遇があります。
Q.アイドリングストップ搭載の車を譲ってもらいましたが、田舎住まいであまり必要性がないように感じます。毎回スイッチで切り替えるのも面倒なので、良い手はありますか?
A.アイドリングストップ機能を利用することがあまりなく、不要と感じている方であればアイドリングストップキャンセラーを利用することで、アイドリングストップ機能自体の作動を止めることが出来ます。アイドリングストップキャンセラーはカー用品店やオンライン通販で購入が出来ますので、一度検討されてみても良いでしょう。
Q.アイドリングストップキャンセラーをつけていて、もう15万km超走った車ですが、売れるのでしょうか?
A.アイドリングストップキャンセラーの取り付け方にもよりますが、もしも配線を一度断線しているなど手を加えている状態の場合中古車としての価値は下がってしまいます。また、15万km以上走行している車の場合、商用バンやトラックのように多走行でも売却がしやすい車は売りやすいのですが、一般的な乗用車であれば廃車買取業者への売却が最も買取がつく可能性があります。走行に問題はないものの、多走行車の場合は複数社でみつもりをとって最も高いところで売却すると、一番高い買取価格になる可能性があるでしょう。
まとめ
アイドリングストップ機能は環境に配慮されていて、燃費が良くなったり排出ガスの排出量も少なくなります。一方で一部のドライバーにはデメリットが気になるという方も多い機能です。バッテリーや電装品の劣化スピードが速く交換時期も早まるため、メンテナンス費用がかかったり、エンジンの再始動にタイムラグが生じてしまうため運転時に気になるドライバーもいます。そのためアイドリングストップをスイッチでの切り替えではなく常時キャンセル状態にできるアイドリングストップキャンセラーも販売されています。
ただし、アイドリングストップキャンセラーが付いている車を売るとなると業者選び次第で買取額が減ってしまうため注意が必要です。キャンセラーは本来不要な機能ですが、買取時にわざわざ取り外しても査定額が上がるわけではありません。廃車としての売却であればそのままにしておいても査定に響きませんので、工賃を払って取り外すと損をする可能性があります。