車の中型免許とはどんな免許かご存知でしょうか。中型免許はもっておくと、運送業界への就職や転職活動で大いに役立つ免許です。就職の応募条件に中型免許所有を前提にしている求人も多く、中型免許をもっていることで仕事の幅も広がります。
中型免許が設定された後に準中型免許も新設されたため免許はさらに細分化されました。中型免許と準中型免許には、どのような違いがあるのでしょうか。
こちらでは、中型免許とはどんな免許なのか、準中型免許と比較して解説しています。
中型免許を取得する方法や、中型免許を取得することでどんなメリットがあるかも合わせて解説していますので、就職活動の前に中型免許を取得するか悩んでいる方は、ぜひ参考にご覧ください。
中型免許とは?準中型免許との違いは
中型免許と普通免許の間に準中型免許が新設されたことで、普通自動車の運転免許は4種類になり、以下の表のように運転免許の種類ごとに運転できる自動車が決まっています。
大型自動車 | 中型自動車 | 準中型自動車 | 普通自動車 | |
大型免許 | ● | ● | ● | ● |
中型免許 | ● | ● | ● | |
準中型免許 | ● | ● | ||
普通免許 | ● |
中型免許とはどんな免許なのか、準中型免許とはどのような違いがあるのか、こちらで解説します。
中型免許と準中型免許は取得できる年齢が違う
普通自動車の免許は種類ごとに取得できる年齢が違います。
免許 | 普通免許 | 準中型免許 | 中型免許 | 大型免許 |
取得年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 | 20歳以上 | 21歳以上 |
また、上記の取得年齢の条件のほかに、中型免許は普通免許等を保有して2年以上の経験年数が、大型免許は普通免許等を保有して3年以上の経験年数が必要となっており、20歳になっていても経験年数がなければ、中型免許または大型免許を受検することがができません。
中型免許と準中型免許があると運転できる車
実は中型免許も平成19年の道交法改正時に新設された免許制度で、中型免許が新設される以前は普通免許と大型免許のみとなっていました。その後、平成19年に中型免許、平成29年に準中型免許が新設されたのです。
普通自動車の免許の現在4種類あり、それぞれの免許ごとに運転できる車が違います。なかでも、中型免許と準中型免許は名称は似ていますが、運転可能な自動車の定義が異なります。
中型免許と準中型免許、それぞれの運転できる自動車がこちらです。
準中型免許 | 中型免許 | |
車両総重量 | 3.5トン以上7.5トン未満 | 7.5トン以上11トン未満 |
最大積載量 | 2トン以上4.5トン未満 | 4.5トン以上6.5トン未満 |
表のように新設された準中型免許に比べると、中型免許のほうが総重量、積載量どちらも重い車を運転することが可能です。しかし、準中型免許をもっていれば最大積載量2トン以上4.5トン未満の車、たとえば運送会社の宅急便の小型トラックや、コンビニチェーンの納品用トラックなどの運転は可能になります。車種でいえば、日野自動車のデュトロやトヨタ自動車のクイックデリバリーなどの運転ができる免許となりますので、準中型免許は20歳以下の方で運転手になるための就職活動されるのであれば、活かすことができる免許といえるでしょう。
準中型免許の制度が新設された理由とは
準中型免許制度が平成29年3月に新設された理由は、若年者の雇用促進と貨物自動車による交通死亡事故を減らすためとされています。
準中型免許が新設されるまで、小型トラックの運転には中型免許が必要でした。中型免許の取得には普通免許または大型特殊免許を取得してから2年以上の期間が必要であり、20歳以上でなければ小型トラックを運転するための免許の受検資格がありませんでした。そのため、若年層の18歳以上20歳未満の人は取得することが出来ず、貨物自動車の運転手に就くことが出来ないことで就職先も限られてしまっていたのです。高校を卒業して運送会社でトラック運転手として働きたいと考えても、必要な資格がとれないため、あきらめざるを得ない状態となっていました。
準中型免許は、普通免許を保有していなくても18歳から取得することが可能で、運転できる自動車の範囲が広くなるため、運送業界の人手不足解消に繋がることが期待されています。
また、貨物自動車の交通死亡事故件数が多かったことも法改正の要因とされています。
法改正されるまで、普通免許があれば総重量5トンまでのトラックの運転が出来ました。しかし特別な講習等しなくてもトラックの運転ができたために、事故も多かったのです。準中型免許を新設し、普通免許で運転できる車の範囲を狭めたことと、車両総重量が3.5トン以上のトラックには免許取得のための講習を必須にすることで交通事故を減らすことにつなげています。
中型免許の取得方法や期間、取得にかかる費用は?
中型免許を取得するには、いくつかの条件があると前述しました。まず、第一条件として取得時の年齢が20歳以上で、普通免許等を保有して2年以上の経過年数が必要です。もしも普通免許等を保有してから2年以上経過していても、交通違反等で免許停止期間がある場合はその期間を除いて2年以上の経過年数が必要になります。では、この条件を通った上で、中型免許を取得するにはどのような方法があるのでしょうか。こちらでは、中型免許をとる方法と、かかる費用や期間を解説します。
また、中型免許が新設される平成19年以前に取得した普通免許を更新して、中型8トン限定条件付で保持している場合は、中型免許と同じ規格の車を運転するには限定解除が必要となるため、中型免許の取得方法とは異なります。
中型免許取得に必要な運転適正検査
普通自動車の中型免許取得には、以下の運転適正検査が必要です。
必要な運転適性 | |
視力 | 両眼で0.8以上かつ、それぞれの一眼が0.5以上であること(眼鏡等による矯正可)深視力検査(三棹法)奥行知覚器で2.5メートルの距離で3回測定し、平均の誤差が2cm以内であること |
聴力 | 10メートルの距離で、90dbの警音器の音が聞こえること(準中型免許は補聴器使用可) |
運動能力 | 自動車の運転に傷害を及ぼす身体障害がないこと |
色彩識別 | 交通信号機の赤色・青色・黄色を識別できること |
中型免許を取得する方法は二通り
中型免許を取得する方法は二通りあります。
一般的に免許取得するために選ばれている方法は、自動車運転教習所に入校するか、合宿免許で取得する方法です。
自動車運転教習所または合宿免許で中型免許をとるには、必要な講習を受けて卒業検定に合格する必要があります。普通免許を取得する時に比べると必要な講習時間は少なくなります。
もう一つの方法が、自動車運転教習所や合宿免許にはいかず、直接運転免許試験場で試験を受ける方法です。
一発試験といわれる方法になり、技能試験を受けるために試験場で試験車を借りる必要があります。費用面でいうと一発試験は当日の学科講習受講料と手数料、試験車利用料のみになるため、最も費用をかけず、中型免許をとることができます。しかし、試験場での審査は厳しく難易度が高いといわれており、不合格の場合はその都度受験料がかかってしまいます。何度も受検することになってしまうと、費用・時間効率どちらもかかることになります。
中型免許の取得にかかる費用の相場
中型免許をとるためにかかる費用は方法によって異なります。一般的な中型免許の取得費用相場をご紹介します。
方法 | 費用 |
運転教習所 | 20万円~25万円 |
合宿免許 | 14万円~17万円 |
一発試験 | 4万円~ |
ただし、教習所や合宿免許は地域や教習所のキャンペーン等によって講習費用が前後します。教習所の口コミサイトなどもありますので、前もって費用を確認してから入校することをおすすめします。
中型免許の取得にかかる平均期間
一発試験の場合は、当日運転免許試験場で学科試験と技能試験を受けて合格すれば取得できます。
自動車運転教習所や合宿免許を利用した場合は、一日に受けることが出来る技能教習時間は2時間までと決まっていますので、最短日数に教習の他、みきわめ検定や修了検定、卒業検定も含んでMT免許なら10日~、AT限定なら13日~かかります。合宿免許は教習所での取得期間に比べると短く、最短8日~と短期間で取得可能にです。
普通免許区分 | 学科 | 技能 | 最短日数 |
MT | 1 | 15 | 10日から |
AT限定 | 1 | 19 | 13日から |
自動車運転教習所または合宿免許で卒業検定に合格した後は、免許センターで適性試験を受けて問題がなければ、中型免許が交付されます。
中型8トン限定免許保持なら限定解除
中型8トン限定条件付の普通免許を持っている人が、11トン未満まで運転できるようになる中型免許を取得するには、限定解除をすることになります。
限定解除をするために必要な技能教習時間は少なく、かかる費用も少ないため、中型免許を取得するよりは負担がありません。
8トン限定解除のため教習所に通う場合は、自動車運転教習所で限定解除講習を受け、卒業検定を受けます。合格すれば限定解除ができて、運転免許証の条件欄から限定の文言がなくなります。限定解除講習の内容は、学科教習はなく技能教習のみで、技能教習時間は5時限となります。
技能教習(カッコ内はAT限定) | 5時限(9時限) |
最短日数 | 4日~(6日~) |
教習所費用 | 8万円~11万円前後(10万円~13万円前後) |
この、8トン限定解除の講習を受ける人がAT車限定の8トン限定免許を保持している場合は、上記の表のように技能教習時限が少し増えます。そのため費用も少し高くなります。MT、AT車限定の8トン限定解除を受講し卒業検定に合格した後は、免許センターで特に試験などを受ける必要はありません。
また、8トン限定免許の限定解除についても試験場で一発試験を受けて合格すれば教習所に通わず取得することは可能です。ただし、こちらも難易度が高いため、あまりおすすめできません。期間も費用も少なく、無難に取得出来る方法ですので、教習所での取得をおすすめします。
教育訓練給付制度がある
中型免許を取得するために運転講習を教習所で受ける場合、教育訓練給付制度の条件内であれば受講費用の一部が支給される制度があります。ただし、給付制度には条件があり、対象でなければ支給はありません。
中型免許をとるメリット
普通免許を取得してから2年以上が経過しているのであれば、中型免許の受検は可能になります。しかし、中型免許をとるには、前述したように費用や時間がかかります。費用や時間をかけてまで、中型免許をとるメリットとはなにがあるのでしょうか。
中型免許はトラックやマイクロバスを運転可能
普通自動車の免許は4種類ありますが、それぞの免許には運転できる車の重さや積載量のほかにも定義があります。それが乗車定員です。
普通免許 | 準中型免許 | 中型免許 | 大型免許 | |
乗車定員 | 10人以下 | 10人以下 | 11人以上 30人未満 | 30人以上 |
上の表のように、11人以上が乗車できる車を運転するには中型免許を持っていなくてはいけません。たとえば、11人以上乗ることが出来るマイクロバスも、中型免許がないと運転してはいけないのです。
中型免許をもっていれば運送業や土木・林業、そのほかに消防用トラックなどの4トントラックも運転が可能になりますし、マイクロバスや回送車の運転もできるため仕事の幅が拡がります。
ただし、中型と免許の名称に入っているものの中型8トン限定条件つきの免許は、11人以上乗車のマイクロバスの運転は出来ません。中型8トン限定条件付きの免許については、次項で詳しく解説します。
お客様を載せるなら二種免許が必要
中型免許には中型一種と中型二種があります。中型一種を持っていても、商用目的の旅客車の運転はできません。料金を取ってお客さんを乗せる定員29人以下の中型バス・マイクロバスでの送迎には、中型二種免許が必須です。コミュニティバスや、中型観光バス、幼稚園やホテルの送迎バスを運転するのであれば、中型二種免許の取得を目指しましょう。
中型8トン限定条件の免許とは
中型免許は持っていないが、普通免許に中型と記載されている人もいるでしょう。その場合には有効期限の欄の下に「中型車は中型車(8t)に限る」という表記があるはずです。
運転免許証に「8tに限る」と表記されている免許は
この8トン限定条件が記載されている免許が存在している理由は、中型免許の制度が2007(平成19)年に創設された比較的新しい制度であることが関係しています。
2022年時点で取得された普通免許で運転できるのは、車両総重量が3.5トン未満の車です。しかし、中型免許の制度が創設される前までは、普通免許で車両総重量が8トンまでの車を運転することが可能となっていました。そのため、中型免許制度施行前に普通免許を取得した人が、突然運転ができなくなって困る事がないように、このような条件付の免許という措置が取られているのです。
「中型車(8t)に限る」の表記がある条件付の普通免許は、車両総重量だけでなく最大積載量と乗車定員も、中型免許制度施行前の普通免許の基準に合わせられていますので、最大積載量が5トン未満で乗車定員は10人までの車であれば運転が可能です。
中型8トン限定免許の運転できる車の区分
車両総重量 | 8トン未満 |
最大積載量 | 5トン未満 |
乗車定員 | 10人以下 |
この中型8トン限定免許は、4トントラックであればほとんど運転可能ですが、乗車定員が11人以上のマイクロバスは運転できません。4トントラックも装備品や荷台の形状などによっては積載量を超えてしまうため、運転できない場合があります。また、就職活動時など履歴書の資格欄に記載する場合は、8トン限定条件付の免許であることを明記しなければいけません。
中型免許についてよくあるご質問
こちらでは、中型免許に関してよくいただく質問にお答えしています。今後中型免許を取得予定の方や、現在中型車8トン限定条件のついた免許を持っていて、限定解除を悩んでいる方もぜひ参考にご覧ください。
Q.中型免許があればどのくらいの大きさの車を運転できる?
A.中型免許を取得している人は、11トンまでのトラックやマイクロバスを運転することが可能です。
運送会社の求人などで中型免許が必要と書いてあるケースもあるでしょう。ただし中型免許は持っていないものの普通免許を持っていて、免許証に「8tに限る」と表記されている人もいます。この8t限定の表記は、中型免許の制度が平成19年に創設されたため、それまでに普通免許を取得していた人は車両総重量が8tまでの車を運転することが可能となっていたのです。8t限定の普通免許を持っている人は、乗車定員10人まで、最大積載量5t未満と決まっているため、4tトラックで積載量が超えていなければ運転が出来ます。ただし、乗車定員が10人を超えるマイクロバスの運転は出来ません。
Q.中型免許を取得する方法とは?
A.中型免許の取得には、自動車運転教習所に通うか、合宿免許に行くか、一発試験に合格するかで取得することが出来ます。
ただし、中型免許の取得条件として、普通自動車運転免許または大型特殊免許を取得してから2年以上経過している必要があります。普通免許の条件として 中型車8トン限定免許を持っている場合は、自動車教習所で限定解除の技能教習を受け、卒業検定に合格することが出来れば限定解除することが出来るため、中型免許を取得することが出来ます。
Q.中型免許と準中型免許の違いって何?
A.中型免許と準中型免許の違いは、運転可能な車の大きさと、取得できる年齢と条件が違います。中型免許を持っている場合、車両総重量11トン未満、最大積載量6.5トン未満、29人以下のマイクロバスやトラックなどの運転が可能です。
準中型免許であれば、車両総重量7.5トン未満、最大積載量4.5トン未満、乗車定員10人以下の車が運転出来ます。また、免許を取得できる条件でいうと、準中型免許の取得できる人は18歳以上になっていることですが、中型免許の取得は普通免許または大型特殊免許を取得してから2年経過が必須となっています。年齢も20歳以上からです。高校卒業後に運送会社に就職しても、20歳以上になるまで運送用トラックの運転は出来ないということもあり、雇用促進のため準中型免許が新設され、運送業界の人手不足の解消につながっているようです。
まとめ
就職活動にも有利となる中型免許ですが、免許をとるには、教習所または合宿免許センターで講習を受けるか、一発試験で合格しなくてはいけません。
また、中型免許の新設前に普通免許を取得していた人なら、普通免許に8トン限定中型車条件が付与されていて、中型免許を同じ区分を運転するには限定解除を行い条件を外すことが必要です。こちらの限定解除の方法は、中型免許を取得する方法比べると時間も費用もあまりかかりません。
もしもすでに中型車8トン限定免許を持っている方で、運送業界で働きたいと考えている人であれば、取得しやすくなっていますので限定解除されることをおすすめします。