軽自動車は普通車に比べると、事故を起こしたときの被害が大きくて危険だといわれています。
それを補うのが自動ブレーキなどの安全装置ですが、種類がたくさんあって迷うところです。何を目安に選べばいいのでしょうか。
軽自動車は危険?実際のところはどうなの?
警察庁の交通課が公表している平成29年(2017年)の「交通事故の発生状況」によると、自家用の普通車による交通事故は209,763件、軽自動車は123,632件です。
一方、国土交通省が公表している平成29年9月の「自動車保有車両数」は、自家用の普通車が39,428,816台(小型車も含む)、軽自動車が22,096,512台です。
単純に交通事故の件数を自動車保有車両数で割ると、普通車の事故率は0.53%、軽自動車は0.56%と、ほとんど違いはありません。
ただし軽自動車は車体が小さくて軽いため、ダンプカーのように大きくて重たい車にぶつかると、潰れてしまうほどのダメージを受けてしまいます。特に横や後ろからの衝撃に弱いのが難点です。
最近は「モノコック構造」といって、車全体で衝撃を受け止めて分散する作りになっています。けれども軽自動車は幅が1.48m以下、長さが3.4m以下に制限されているため、事故の衝撃を吸収しても、座席まで保護できるだけのゆとりはありません。またコストダウンのためにボディの厚みが違うなど、軽自動車は強度も普通車より劣りがちです。
そこで各自動車メーカーは軽自動車に安全装備を搭載し、少なくとも自ら事故を起こさないようにリスクを軽減しています。おかげで平成24年(2012年)以降の交通事故件数は順調に減少しているのです。
普通車にも負けていない!軽自動車の安全装備事情
最近の軽自動車は各メーカーとも、安全装備が充実しています。エアバッグは運転席や助手席だけでなく、シートの横やドアにも取り付けられているほどです。こうしたサイドエアバッグやカーテンエアバッグは、横からの衝撃を吸収してくれます。事故に強い軽自動車づくりには欠かせません。
自動ブレーキは障害物を検知して警告音を鳴らしたり、ぶつかる前に減速や急停止してくれたりする機能です。同様の機能を応用して、ブレーキとアクセルの踏み間違いも防止してくれます。
他にも居眠り運転などで車線を逸脱すると警告音を鳴らす安全装備もあります。「クルーズコントロール」を搭載していれば、前を走る車と一定の車間距離を保ちながら自動的に追従してくれるので、長距離の運転による疲れを軽減できるでしょう。
こうした安全装置は進化が早く、特に障害物を検知する能力は目覚ましく向上しています。出始めの頃は「赤外線レーダー」が主流で、感知できるのは車だけであり、自動ブレーキが作動するのは時速30km以下でした。
その後「ミリ波レーダー」が登場して、悪天候の影響を受けずに遠くまで感知できるようになりました。モデルによっては時速100km以上でも自動ブレーキが作動してくれます。
ただしミリ波レーダーでも車以外を感知するのは苦手です。そこで人の目と同じ機能を持つカメラを搭載して人や自転車も感知できるようにしました。もっとも天候に左右されやすいという欠点はあります。カメラは単眼とステレオタイプの2種類です。
いずれの方式も得意なところと苦手なところがあるため、最近はレーダーとカメラを組み合わせて障害物を検知しています。これにより自動ブレーキも多くの条件で作動するようになりました。
最近の軽自動車は安全装備を搭載することにより、NASVA(自動車事故対策機構)の「自動車アセスメント」でも高い評価を得ています。ランキングの上位モデルは普通車と遜色ありません。特に2017年9月にフルモデルチェンジしたホンダのN-BOXは、衝突安全性能評価でも予防安全性能評価でも、他の軽自動車を大きく引き離しています。
どんな軽自動車を選べばいい?安全装備の目安とは
これから軽自動車を購入するときは、安全装備も重視したいところです。けれども安全装備はメーカーによって名称が異なるため、どれを選んで良いのか分かりません。例えばホンダなら「Honda SENSING」ですし、ダイハツなら「スマートアシスト(SA)III」、スズキは「〇〇ブレーキサポート」です。
まずは経済産業省が推奨する「サポカー(セーフティー・サポートカー)」に該当する軽自動車を選ぶことです。最近では「サポカーS」という上位の区分もあります。その中でも「ベーシック」「ベーシック+」「ワイド」の3つに分かれており、「ワイド」が最も優れています。
サポカーSワイドが搭載する安全装置は、対歩行者向けの自動ブレーキ、ペダルを踏み間違えたときの加速抑制装置、車線逸脱警報です。自動で点灯したり、進行方向を照らしてくれたり、ハイビームとロービームを切り替えてくれたりするヘッドライトも含まれます。
軽自動車ではホンダのN-BOXやスズキのワゴンR、ダイハツのムーヴキャンバスなど、この2~3年でフルモデルチェンジしたり、新たに発売されたりしたモデルが該当します。
同様に最新の安全装備を搭載しているかも重要です。同じダイハツのスマートアシストでも最新はIIIで、現行モデルにはIIも混在します。特に中古で軽自動車を購入するときは要注意です。もちろん先ほどのNASVAの結果も参考になります。上位にランキングされているのは最新の安全装備を搭載しているモデルです。
ただし同じモデルでも下位のグレードでは一部の装備がオプションだったり、そもそも搭載できなかったりする場合があります。安全装備を充実させると車の値段は高くなるのが一般的です。値段を抑えるためにオプションで安全装備を外せるモデルもあります。
例えばダイハツのキャスト・スタイル「X」というグレードは、スマートアシストIIIの有無で64,800円の違いです。他の装備の違いも値段に反映されているなら、あえて下位のグレードを選び、オプションで安全装置を充実させてもいいでしょう。オプションは後から追加できないので、慎重に判断したいところです。
軽自動車の安全装備は保険や査定でもメリットがある
軽自動車の安全装備は事故を防いでくれるだけでなく、保険や査定でもメリットがあります。最近では2017年5月に損害保険料率算出機構が、自動車保険の参考純率を平均で8%引き下げました。安全装備を搭載した車が増えたことで、対物賠償保険や車両保険の保険金が減少したからです。
2018年からは「自動ブレーキ割」を導入する保険会社が増えました。発売から3年以内のモデルで自動ブレーキを装着していると、保険料が9%割引されるものです。現在は普通車だけですが、2020年からは軽自動車も対象になります。
実際に自動ブレーキの安全性は証明されており、スウェーデンの自動車メーカー「ボルボ」では、非搭載車に比べると事故発生率が69%減少したとレポートしています。
ただし保険料が割引されるのは、現時点で自動ブレーキを搭載する車がまだ少ないからです。過去にあったエアバッグ割やABS割が現在では廃止されているように、自動ブレーキが義務化されれば、いずれ保険料の割引も廃止されるでしょう。
査定では、標準で安全装置の無い車にオプションで追加すると、評価が高くなります。先述のとおり、安全装置のオプションは後から追加できないからです。もっとも高く評価されるのは現在でも通用する装置に限ります。
同じ安全装置でも技術が古いものは逆に不要な機能であり、オプションでも評価が低くなりがちです。安全装置の進化は早いため、現在では最新と謳われていても手放すときはどのように評価されるか分かりません。過度の期待は禁物です。
まとめ
軽自動車は普通車に比べて危険だといわれていますが、最近は安全装備の搭載によって事故件数が減少しています。
その中でも「サポカーSワイド」の車を選ぶと安心できるでしょう。
最新の自動ブレーキを搭載している車なら、自動車保険料が割引されます。