オーバーフェンダーに興味があり、幅の広いタイヤを取り付けた人は珍しくありません。
しかし、後になって調べてみると、オーバーフェンダーを取り付けると「車検」に通らなくなるという内容を見かけてしまいます。
そこで、オーバーフェンダーと車検について解説します。
オーバーフェンダーの役目は?
まずは、オーバーフェンダーの役割と、他のフェンダーとの違いについて解説します。
フェンダーの一種である
オーバーフェンダーは「フェンダー」の一種です。フェンダーは車体の部品の一つであり、回転するタイヤ自体、もしくはタイヤによる車の泥や水、石などの撥ねから乗員や近隣の歩行者を保護するための部品です。
オーバーフェンダーはそのフェンダーの上に後付けするパーツです。車の全幅を広げるために取り付け、メーカー純正ボディのノーマルフェンダーに三日月形のボディパーツを被せます。ブリスターフェンダーと同義のものとして捉えがちになりますが、細かい点で違いが見られます。
ブリスターフェンダーの場合、フェンダー自体が外側に膨れ上がっている状態そのものであるのに対し、オーバーフェンダーは既存のノーマルフェンダーの上に被せる外部のパーツとなります。最初から外側に膨れているブリスターフェンダーとは別のものであることを認識しておきましょう。
オーバーフェンダーが必要なとき
オーバーフェンダーは、幅広のタイヤを取り付けるときに使うパーツであり、レーシングカーに装着されたのを機に人気となりました。
オーバーフェンダーの取り付けに関しては、「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」の第178条において、以下の内容が規定されています。
第178条の2
車体の外形その他自動車の形状に関し、保安基準第18条第1項第2号の告示で定める基準は、車体の外形その他自動車の形状が、鋭い突起を有し、又は回転部分が突出する等他の交通の安全を妨げるおそれのあるものでないこととする。この場合において、次に該当する車枠及び車体は、この基準に適合するものとする。
一 自動車が直進姿勢をとった場合において、車軸中心を含む鉛直面と車軸中心を通り それぞれ前方 30 °及び後方 50 °に交わる2平面によりはさまれる走行装置の回転部分(タイヤ、ホィール・ステップ、ホィール・キャップ等)が当該部分の直上の車体(フェンダ等)より車両の外側方向に突出していないもの
出典:第178条(車枠及び車体)
(http://www.mlit.go.jp/jidosha/kijyun/saimokukokuji/saikoku_178_00.pdf)
要するに、タイヤ・ホイールがフェンダー等よりも車両の外側に突出してはならないと規定されているのです。そのため、ノーマルフェンダーからはみ出てしまうような幅広のタイヤ・ホイールを装着する際にボディを拡張させる必要があり、後付けで装着できるオーバーフェンダーが考案されました。
オーバーフェンダー付きだと車検に通らない?
オーバーフェンダーの取り付けは車検に深く関わります。そこで、オーバーフェンダーを取り付けて車検に通すときや、構造変更するときの注意点について解説します。
全幅や取り付け方法の決まりがある
車検に通るには、車検証の全幅より「20mm未満の拡大」にとどめなければいけない決まりがあります。オーバーフェンダーを取り付けるということは、「車の幅」が変化することになります。オーバーフェンダーを取り付けたことにより増えた幅が、車検証に載っている全幅より20mm未満だと問題ありません。しかし20mm以上大きくなって場合は「構造変更申請」が必要です。
他にも「固定方法」も問題となります。たとえば両面テープだけで取り付けをしていると、オーバーフェンダーが固定されていないと判断され、車検に通らない可能性が高くなります。オーバーフェンダーをきちんと固定していると判断してもらうためには、ビスやリベットなどの恒久的な方法でしっかりと固定する必要があります。
オーバーフェンダーの構造変更とは?
オーバーフェンダーを取り付けたことにより、車検証記載の全幅よりも20mm以上増えた場合は、構造変更申請が必要です。手続きは運輸支局(軽自動車は軽自動車検査協会)で行います。構造変更検査を受けると、2年間有効の車検証が発行されます。それまでの車検の残期間は無効になるので、車検を受けるタイミングで構造変更しておくことをおすすめします。なお、拡大の幅によっては車種(軽自動車や普通自動車)やナンバーが変わり、税金なども変更になる点にも気をつけていきましょう。
さらに、20mm未満の増加でも、増加後の全幅が一定のラインを超えた場合には注意が必要です。普通自動車(3ナンバー)、小型自動車(5ナンバー)、軽自動車それぞれに、超えてはいけない全幅があり、以下の基準があります。
- 軽自動車:1,480mm以内
- 小型自動車(5ナンバー):1,700mm以内
- 普通自動車(3ナンバー):2,500mm以内
たとえば軽自動車として登録していた車にオーバーフェンダーを取り付けて、その全幅が1,485mmになった場合、軽自動車ではなく小型自動車として登録が必要になります。
仮に増加幅が20mmよりも少なかったとしても手続きが必要ですので、きちんと手続きを行ってください。また、車の種類が変われば、かかる税金も変化するので注意しましょう。
オーバーフェンダーを取り付けてみよう
最後に、オーバーフェンダーの取り付け費用や実際の使われ方について解説します。
費用はどれくらい?
オーバーフェンダーの価格は、購入するオーバーフェンダーの種類によって大きく異なります。安く済ませようと思うのであれば「汎用品」がオススメで、安いものだと2,000円台から販売されています。
しかし、メーカーの純正品となれば、その程度では購入できないケースが多く、もっと高い販売価格となります。安さをとるか、または純正品のブランド価値を取るかは、人によって好みが異なりますので、好きな方を選択してください。
また、別途かかる費用としては、まず「取付費用」があります。工賃として1万~2万円の費用がかかります。また、「ブリスターフェンダー」のように、継ぎ目の見えない加工をする場合だとさらに費用がかさむため注意が必要です。このように、工賃と、こだわりのための費用を考えると、もっとも安い2,000円台で済むケースは珍しいといえます。
こんな車にもオーバーフェンダー
オーバーフェンダーの取り付けは、旧車およびスポーツタイプに多く見られていました。しかし、後付が比較的容易であることから、さまざまな車種においてオーバーフェンダーの取り付けが行われています。悪路を走行することを考慮すれば、SUVやクロスカントリー、4WDとの親和性・相性もよいと考えられます。
また、クロスオーバー感を出すという目的、つまり飾りとしてオーバーフェンダーを活用するという手法もあります。いずれにしても、構造変更申請が必要になるかどうかについては、あらかじめ考慮しておく必要があります。
まとめ
オーバーフェンダーは機能性と見た目のカッコよさなどが魅力ですが、車幅が変化することによって手続きが必要になるという点は無視できません。
取り付けを検討する際には、手続きの必要の有無や費用について、十分に考慮することをオススメします。