車の塗装技術は、年々向上しています。車の色あせが起きにくくなり、剥がれを起こしにくくもなっています。しかし場合によっては、車の塗装をしておきたいと思うケースもあるでしょう。
塗装を業者に依頼すると、費用がかかりますので、自家塗装を考える方もおられます。この記事では、自家塗装を考える場合のポイントや、自家塗装できるかを判断するポイントなども解説していきます。
車の自家塗装、どこまでできる?
まず自家塗装をする前に、自家塗装が可能なのかを判断する必要があるでしょう。基本的な知識を持っていれば、自分でもDIYで塗装ができる場合もありますし、塗装の出来を考えると業者に依頼する方が良いというケースもあります。
小さい傷なら自分でもOK
車を塗装することを考える大きな原因は、車を擦ってしまったり、凹ませてしまったりというケースです。何かの障害物と擦ってしまうと、見栄えも良くありませんので、塗装をして補修を行いたいと思います。
擦ってしまった車のケースでは、塗装する範囲が非常に小さいという場合もあるでしょう。浅い擦り傷の場合には、タッチアップやコンパウンドによる補修でカバーできるので、自家塗装でも問題ありません。ホームセンターやカーショップで塗料を購入することができるので、手軽に行えます。
もし深い擦り傷になっており、板金も必要になると、大掛かりな作業が必要です。塗装を剥がしてから下地を整え、中塗りやベースコートという過程を経て、塗装を行う事ができます。
作業の工程が大きく増えるのと共に、塗装範囲が広がるので、自家塗装では対応できないほどになります。専用の機材を持っているのであれば、自家塗装をすることもできますが、初心者であれば、業者に依頼するのが賢明でしょう。
塗装の種類
自家塗装を行う際に、選ぶことができる塗装にはいくつかの種類があります。それぞれ塗装の方法や、見た感じに大きな影響を与えます。
・刷毛、ローラー
刷毛やローラーでは、ペンキを塗るようなイメージで、塗装を行います。車体用の塗料を、刷毛やローラーで塗っていくのですが、マットな仕上がりになるのが特徴です。レトロな雰囲気や、ミリタリー調の仕上がりにしたい時に、ぴったりの塗装方法です。
・缶スプレー
自家塗装と聞いてイメージしやすいのが、缶スプレーでの塗装でしょう。ホームセンターでも購入することができ、自宅の駐車場でも塗装することができるほどの気軽さが魅力です。塗料を混ぜる必要もありませんし、機材が無くても塗装できるという特徴もあります。
・スプレーガン
スプレーガンの場合には、ある程度の設備や機材が必要になりますが、本格的に塗装を行う事ができます。コンプレッサーを使用し、力を必要とせずに作業を行えますし、塗料を均一に吹き付けることができるので、仕上がりも非常にきれいになります。
自家塗装と業者のメリット・デメリットとは
自家塗装をするのか、それとも業者に依頼するのか、どちらにもメリットとデメリットがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
自家塗装のメリット・デメリット
・メリット
自家塗装の最大のメリットは、コストを抑えることができる点です。スプレー缶や塗料などを購入すれば、ある程度の費用がかかりますが、それでも業者に依頼するよりは安くなります。
また自宅でも作業をすることができるので、どこかに預けて作業が終わるまで待っているという必要もありません。気軽に作業できることが大きな特徴になるでしょう。
・デメリット
逆にデメリットになるのが、自分で作業を行うので、労力や時間がかかるという点です。車が好きな方の場合では、時間が過ぎるのが早いと感じるかもしれませんが、それでも時間がかかることには変わりありません。
また仕上がりがうまくいかないこともあります。塗装のプロではありませんので、艶や塗装のムラの面で、きれいとは言えない仕上がりになる可能性もあります。
業者のメリット・デメリット
・メリット
業者のメリットは、塗装のプロであるという点です。車を預けてしまえば、新車のような輝きで戻ってくることが期待できます。一部分だけの塗装をしていたとしても、境目が分からないほど違和感なく仕上げることができます。
塗装を剥がすところから、しっかりと作業を行っているので、塗装の仕上がりが良いという以外でも、耐久性も期待することができます。下地の作業がおろそかになりがちな自家塗装と比較をすると、塗料がしっかりと下地に密着しています。
・デメリット
業者に塗装を依頼するデメリットとして、コストがかかるという点があります。当たり前の話ですが、プロに依頼するので安くはありません。塗装を剥がしてから、下地を作っていき、数層に重ねて塗装を行うので費用がかかります。
また塗装を依頼する業者によっても、費用が異なります。見積もりを依頼して、安い業者に依頼するかもしれませんが、塗装の質とのバランスも考えておきたいものです。これもデメリットの中に含まれるでしょう。
自家塗装する場合の手順
それでは実際に自家塗装を行う時の手順を考えていきましょう。手順を守り、手間をかけて作業をすることで、自家塗装でも良い仕上がりにすることが可能です。
下地処理
塗装をスタートするには、下地処理から始めます。塗装する表面をきれいにし、油汚れが無い状態にしておくのです。
そして傷が目立たないように、耐水ペーパーで磨いていきます。粗目の耐水ペーパーでスタートし、徐々に細かい目の耐水ペーパーに変えていき、丹念に磨いていきます。少し磨いては水をかけて、下地の状態を確認し、滑らかで美しい下地になるように調整していきます。
凹みが大きい場合には、パテで埋めてから下地を作りましょう。パテで埋めてからも、パテと下地の段差ができないように、耐水ペーパーで磨く必要があります。
目で確認するだけでなく、指先でも時折チェックを行い、滑らかな下地を作っていきます。
塗装の手順
塗装を行う手順は、以下の通りです。この手順を怠らずに行う事が、きれいに仕上げるコツです。
・塗装しない部分をマスキング処理する
マスキングをすることで、塗料が飛散して、塗りたくない場所に塗料が付くのを防ぎます。細かな部分も、隙間があると塗料が付着してしまうので、マスキングテープの間に隙間が無いか確認しながらマスキング処理を行います。
・車の表面をツルツルに磨きあげる
そのまま塗料を吹き付けることもできるのですが、塗料の付着と発色を良くする目的でプラサフ(下塗り材)を吹きます。一度に厚塗りをするのではなく、数回に分けて塗るときれいな下地を作ることが可能です。
・塗料を少しずつ塗り重ねる
塗料を吹き付けていくのですが、これも少しずつ塗っていくのがポイントです。厚く塗る方が良いような気持ちになるのですが、薄く回数を重ねる塗り方の方が、きれいにムラなく仕上げることができます。
・光沢を出すために、クリア剤を塗る
クリア剤を吹き付けることで、ボディに艶がでてきます。仕上げの塗装としてクリアを吹きます。比較的薄めに吹くことが、ポイントとなります。
・スプレーダストをなくすためにボカシ剤を塗る
一部分の塗装をする場合には、ボカシ剤を塗る事で、塗装をしていない部分との境目が分かりにくくすることができるのです。スプレーダストを無くすためのボカシ剤を最後に塗ります。ポイントとして、非常に垂れやすい塗料ですので、薄めに吹くことが挙げられます。
自家塗装で覚悟すべき事
以上が自家塗装の方法などの情報となります。
業者に依頼する方法はもちろん、個人で行うこともできる内容ではありますが、この塗装に関しては一点注意すべき点がございます。
それは、塗装を行う範囲が広すぎる場合は、中古車として買取に出した際に「全損」と同じ扱いとなり、査定額がつかない可能性があるということです。
この事実は意外と知らない方が多いので、塗装を行う前にその事を把握しておくべきでしょう。
もちろん、塗装を行なった場合であってもカーネクストのように全損扱いの車でも買取を行う業者もあるため、売る方法自体がなくなる訳ではありませんので、その点はご安心ください。