2020年12月には、トヨタの燃料電池自動車MIRAIの新型が発売予定です。トヨタ自動車といえば、23年前の1997年に「21世紀に間に合いました。」のキャッチコピーとともにに、世界初の量産型ハイブリッド自動車であるプリウスの販売を開始し、世界的な話題となったことで知られています。こちらでは、ハイブリッドカーとプラグインハイブリッドカーについて、また、ハイブリッドカーを賢く廃車する方法も合わせてご紹介します。
ハイブリッド自動車とはどんな車なのか
ハイブリッドカーに採用されているハイブリッド-システム【hybrid-system】とは、自動車などの複合原動機システムの名称です。ハイブリッドシステムで走るハイブリッドカーには、発電・駆動の方法によって異なる、3つの方式があります。方式は、ガソリン(エンジン)と電気(モーター)の2つを組み合わせて発電・駆動する方法ごとに分別しており、「シリーズ方式」「パラレル方式」「スプリット方式」と3つのパターンがあります。
パラレル方式ハイブリッド
パラレル(並列)方式ハイブリッドとは、複数の動力源を車輪の駆動に使用する仕組みです。
発電機を兼ねるモーターを1つ搭載しており、発進時や急加速時などのエンジンが苦手とする場面ではモーターを使ってタイヤを駆動させ、一定速度で走行できる場面ではエンジンのみでタイヤを駆動させます。モーターを使わない場面は回生エネルギーでバッテリーに充電します。モーターとしてタイヤに動力を伝えているときには発電できず、発電しているときにはモーターとして使うことはできませんので、走行中の発電は不可能です。バッテリーの容量やモーターの性能によっては単独でタイヤを駆動させることができず、エンジンによる駆動力をモーターでアシストするタイプもあり、出力の大きさによって「マイクロハイブリッド」「マイルドハイブリッド」「ストロングハイブリッド(フルハイブリッド)」と、呼び方が別れます。バッテリーやモーターの性能が上がれば、エンジンの負荷が減ってガソリンの消費が減りますが、その代わりに部品代が高くなってしまい、車の重量も増すというデメリットもあります。
マイクロハイブリッド
モーターの出力が非常に小さいため駆動アシスト能力はほとんどなく、アイドリングストップからの再始動や電装品のための発電にモーターが使われます。そのため、ハイブリッド車というよりはほぼガソリン車です。
マイルドハイブリッド
モーター単独でタイヤを駆動させるには出力が不足しているため、走行時はタイヤの駆動にエンジンを常に使用しますが、発進時などでエンジンの負荷を減らすためにモーターでタイヤの駆動をアシストします。
ストロングハイブリッド(フルハイブリッド)
モーターの出力が十分にあるため、発進時などのエンジンの負荷が高い場面で、モーターのみでタイヤを駆動させることができます。一般的に「ハイブリッドカー」と言われて想像するのはこのタイプでしょう。
パラレル方式ハイブリッドカーを採用している自動車メーカーはホンダ、スバルなどになります。
例:フィットハイブリッド、アコード、XVハイブリッドなど
シリーズ方式ハイブリッド
シリーズ方式ハイブリッドとは、ガソリン(エンジン)を発電目的のみに使い、タイヤを駆動させるのは電気(モーター)のみを使うという方式です。ガソリン(エンジン)で発電する電気自動車であると言えますが、日本のメーカーで「シリーズ方式」を採用しているところが少ないため、日本で一般的に「ハイブリッド」と言う場合は「シリーズ方式」以外の方式(=「パラレル方式」及び「スプリット方式」)のことを指しているものと思われます。
シリーズ方式ハイブリッドの初の量販車はシボレーのボルトです。日本のメーカーでは最近までは採用例が全くなかったものの、日産が同社の代表的な車種であるノートのマイナーチェンジに合わせてシリーズ方式を日本で初めて採用した「NOTE e-POWER」を2016年11月に発売しました。
スプリット方式ハイブリッド
「スプリット方式」は、シリーズ方式とパラレル方式を組み合わせたようなシステムであるため、「シリーズパラレル方式」とも呼ばれます。発電機を兼ねるモーターとは別に発電機をもう1つ搭載しており、走行中でもモーターでタイヤを動かしながら発電機による発電も同時に行うことが可能で、走行状態に合わせて最適な組み合わせで走行することができるため、最も燃費に優れた方式であると言えます。しかし必要なパーツも多くなるため、その分車両価格も高くなってしまいます。
スプリット方式ハイブリッドは、主にトヨタ(及びトヨタから技術提供を受けているマツダ)が採用しており、トヨタ・プリウスやトヨタ・アクアなど、トヨタの代表的なハイブリッドカーはスプリット方式になっています。
プラグインハイブリッドカーとは
プラグインハイブリッドカーとは、ガソリンと電気(モーター)を用いるハイブリッドシステムのバッテリーに、電源コンセントから差し込みプラグを用いて直接充電が可能になっているシステムを採用した自動車のことです。プラグインハイブリッドカーは「PHV」と「PHEV」という2種類の略称がありますが、これは搭載する駆動用バッテリーの総電力量により区別されるもので、トヨタ・プリウスPHV(総電力量:4.4kWh(旧型) / 8.8kWh(新型))のように、ハイブリッド車(HV)寄りで総電力量が比較的少ないものは「PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)」、三菱・アウトランダーPHEV(総電力量:12.0kWh)のように電気自動車(EV)寄りで総電力量が比較的多いものは「PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)」と呼ばれます。ただし、PHVかPHEVかの境目について、厳密な規定があるわけではありませんので、どのように呼ぶかはメーカーの自由です。
ハイブリッドカーと電気自動車のいいとこ取り?
ハイブリッド車は通常のガソリン車よりも燃費に優れているとは言え、電気自動車の燃費(電気自動車の場合は電費)程は良くありません。その代わり、ガソリン車がベースのため、電気自動車と違って燃料の補給は短時間で済みますし、航続距離も長いです。
電気自動車は燃費(電費)に優れている反面、航続距離はガソリン車やハイブリッドカー程は長くなく、充電に非常に時間がかかってしまう(急速充電でも80%までの充電に30分程度必要)ため、長距離走行に向いておりません。
それらに対して、プラグインハイブリッドカーは、短距離は電気自動車と同等の燃費(電費)で走行でき、長距離でバッテリーが枯渇してもガソリンを消費すれば走行できるので、ハイブリッド車と電気自動車のメリットを併せ持っている最強のエコカーと言えます。
デメリットは、高性能なバッテリーやモーターを搭載することになるので、通常のハイブリッドカーよりも更に車両価格が高くなってしまうことです。
また、その他にも通常のハイブリッド車と同程度のエンジンに加え、電気自動車に次ぐ性能のバッテリーも搭載する必要があるため、車両重量が増加し、室内空間が狭くなってしまうこともデメリットと言えるでしょう。
メリットだけを見れば非常に魅力的なプラグインハイブリッドカーですが、デメリットのうち特に車両価格が原因で現状はそれほど普及できていません。また、電気自動車と同様に、充電用設備の設置が必要(特にマンション等の集合住宅で設置し難い)という所も一つの障壁となっているでしょう。
プラグインハイブリッドカーの車種例
日本の自動車メーカーでプラグインハイブリッドカーを開発・販売しているのは、トヨタ(車種:プリウスPHV、RAV4PHVなど)と、三菱(車種:アウトランダーPHEV)、ホンダ(車種:クラリティPHEV)の3社です。こちらでは人気の2車種についてご紹介します。
トヨタ・プリウスPHV
プリウスPHVは2012年に販売開始しましたが、総電力量が4.4kWhと非常に少ないため、EV走行時の航続距離は23km程度でした。往復1時間程度の近所の買い物などであればEV走行のみで問題ありませんが、少し遠出する場合は満充電からでもバッテリーが足りなくなり、普通のハイブリッドカーと同じようにガソリンで走行するようになっていました。プリウスPHVは、新型の方は総電力量8.8kWhと倍増し、航続距離(目標値)も60kmと大幅に増えました。これだけの航続距離があれば、夜間に満充電にしておけば日常生活で利用する分には不足することはほとんどないでしょう。プリウスPHVのルーフパネルにはソーラーパネルもついているため、充電スタンドがなくとも太陽光で少しずつとは言え充電することが可能になっています。
三菱・アウトランダーPHEV
アウトランダーPHEVは2013年に販売開始しました。アウトランダーPHEVは総電力量12.0kWhと大容量になっているため航続距離も60.2kmと長く、プラグインハイブリッドカーの中では初めて「V2H(Vehicle to Home)」に対応しました。(プリウスPHVはV2H非対応)「V2H(Vehicle to Home)」とは電気自動車やプラグインハイブリッド車などの大型のバッテリーを持つ車両(Vehicle)が蓄えている電力を、家庭(Home)用電力として利用することを指します。
停電時にも家で電力を利用可能になるため、災害時に非常に有用です。このように非常に魅力的なプラグインハイブリッドカーですが、車両価格と充電設備がネックであまり普及していないので、集合住宅のガレージやパーキングエリアや商業施設などの充電設備の増設に加え、自動車メーカーが頑張って安くしたり、国が補助金を追加して、普及価格帯まで車両価格を引き下げてくれると良いですね。
ハイブリッドカーを賢く廃車するには
世界初の量産型ハイブリッド自動車「プリウス」の販売が開始してから23年。プリウス発売以降、ガソリン車からハイブリッド自動車に乗り換えたという方は、その後一度は買い替えや廃車をしたことがあるかもしれません。ガソリン車とハイブリッド自動車では廃車の方法は違うのでしょうか。また、賢く廃車するために大切な廃車の売却先選びのポイントも、最後にご紹介します。
ハイブリッドカーの廃車方法
ハイブリッドカーを廃車する方法は、ガソリン車と大きく違いはありません。ハイブリッドカーの廃車をするために、廃車を解体業者まで移動し、ナンバープレートを外して他の書類と合わせたら、運輸支局へ提出して廃車手続きを行います。車本体を解体業者まで移動出来たら、ハイブリッドカーは解体業者によってリサイクルできるパーツと、廃棄処理が必要な素材とに分別され適切な処理を行います。
ハイブリッドカーとガソリン車で大きく異なる部分は、モーターを動かす大容量のバッテリーを搭載していることです。自動車メーカーによって対応は異なりますが、トヨタ自動車では2010年10月からHVバッテリーのリサイクル事業を推進しており、【トヨタHV引取受付センター】を設けて自動車解体業者からHVバッテリーを回収後リサイクルを行っています。
ハイブリッドカーの売却先選びのポイント
ハイブリッドカーを廃車する際、売却先をどこにすべきか悩む方に、売却先選びのポイントをご紹介します。国内での中古車販売店での買取査定は、再販時の価値が大きく影響するため燃費の良いハイブリッドカーであっても低年式車になると、価値が下がりあまり良い査定額にはならない可能性があります。ところが、プリウスやアクアといった海外で人気の高いトヨタ自動車のハイブリッドカーは、海外で輸出中古車としての需要があります。特に輸入する国次第では、新車には高い関税がかかるのに、中古車には関税がかからないという地域もあります。このため、海外への輸出販路を持つ売却先を選ぶと、ハイブリッドカーの廃車買取査定において良い査定結果が出る可能性があるのです。