長く乗った車がボロボロになり手放す時、「廃車しよう」「スクラップしよう」と考える方は多いでしょう。廃車とスクラップを同じ意味として使っている方も多いと思いますが、実は違います。車のスクラップとは車を解体することで、廃車をする時の工程の一つです。
こちらでは車のスクラップについて詳しく解説しています。スクラップする予定の車がある方や、廃車予定の方はぜひご覧ください。
車のスクラップとは
車の処分をする時に「廃車しよう」「スクラップしよう」と考える方が多いでしょう。実は「廃車」と「スクラップ」は、厳密にいうと同じ意味ではありません。
こちらで車のスクラップについて詳しく解説します。
車のスクラップと廃車の違いとは
車のスクラップとは車を粉砕した鉄くずにすることではなく、自動車を解体し分別する作業のことです。
車のスクラップは自動車解体が出来る設備を保有する専門の業者が、使用済自動車を引き取って解体し、部品や部材を分別して、リユースやリサイクルできる部品を取り外します。分別して取り出した車の部材である鉄くずなどの金属は、プレスされて鉄の塊に加工しリサイクルされます。分別して残ったリサイクルが難しいシュレッダーダスト(産業廃棄物)は、リサイクル法に従い適切に処分が行われます。この一連の自動車リサイクルの作業が、車のスクラップになります。
廃車とは、車を処分する時に必要な事務手続きのことです。不要になった車を廃車するには、運輸支局で一時抹消登録手続き、または永久抹消登録手続きをする必要があり、その手続きを行うと廃車が完了します。
廃車の事務手続きには二種類あり、一時抹消登録手続きは自動車の使用を一時的に中止するための手続きとなり、永久抹消登録手続きは自動車をスクラップして解体処理が完了した後に車の登録情報を抹消する手続きとなります。
そのため、車のスクラップをしただけでは廃車は出来ておらず、車のスクラップをした後に、廃車の事務手続きまで終えることで、すべての廃車手順が完了となります。
車のスクラップをする手順
車のスクラップは、自動車解体業者が使用済の自動車を引取って工場で解体作業を行うことです。
車のスクラップの作業内容は、鉄くずや金属をプレスして車を使えなくする作業のみと思われている方も多いかもしれませんが、実は専門業者が手順に沿って解体し、使えるものと使えないものに分別を行う作業も含まれています。車のスクラップの細かい手順は業者によって異なりますが、大きく分けると、下記の2つの行程を順番に行っています。
1.解体して部品を取り外す
まずは、車を解体し再利用可能な部品を取り外す作業を行います。
車の状態にもよりますが、タイヤやホイール、オーディオ機器などは中古市場で取引されることがあります。エンジンも中古市場で取引されたり海外に輸出され、中古パーツとして再販されます。中古品として利用価値のない、溝がなくなったタイヤは廃タイヤ専門処理業者に引き渡します。タイヤとしては使えなくても、燃料チップとして再利用されるのです。また、ホイールは鉛を取り除いて鉄やアルミの引取専門業者へ引き渡すことで、別の製品に生まれ変わります。
その後は、自動車リサイクル法で取り外すよう定められているものを外す作業です。自動車リサイクル法では、環境に悪影響を与えるフロン類やエアバッグ類は取り外すよう義務付けています。昔はそれらもまとめて破砕していたようですが、現在は制度が厳しくなっており、業者はきちんと取り外して安全に処理するように定められています。
そして、タンク内部に残っているガソリンやエンジンオイル、冷却水などを取り除くと部品の取り外しは完了します。
2.破砕処理をする
車からリサイクルできる部品や取り外しが義務付けられている部品を取り除いたら、破砕処理を行います。
まずは内装のダッシュボードやサイドドア、運転座席、助手席、後頭部座席といったものを取り外し、プレスできる状態にします。その他、足回りの鉄類は硬くて圧縮が難しいので取り外します。
内装などを取り外して準備できたら、プレス機による圧縮スタートです。廃車ガラをプレス機に投入することでコンパクトに圧縮されます。圧縮された廃車はシュレッダーマシンにかけられ、車は10〜20cmほどに砕かれるのです。
そしてプラスチック類と金属類に分けられ、磁力によって細かい鉄類を除去することで、シュレッダーダストが完成します。シュレッダーダストとは破砕くずのことで、産廃として捨てられる破片の混合物です。自動車シュレッダーダストの処分方法は、自動車リサイクル法により管理型処分場にて埋め立て処分することが義務付けられています。
車のスクラップにかかる費用はいくら?
車のスクラップをするのに費用はいくらかかるのでしょうか。
スクラップの解体作業の費用以外にも、スクラップをするための手順において費用が発生することもありますので、そちらも合わせて解説します。
車のスクラップにかかる費用の内訳
解体費用 | 運搬費用 | 事務手数料 |
15,000円~ | 20,000円~ | 3,000円~ |
解体(スクラップ)費用
解体費用とは、自動車解体の専門業者に車のスクラップを依頼すると請求される費用です。スクラップの費用相場は平均1.5万円~となります。解体費用は多くの場合、解体手数料として解体業者から請求されて、依頼者の支払いが完了してから車のスクラップが開始される事が多くなっています。稀に先に契約書へ署名を行い、支払いとスクラップ作業を並行して行う業者も存在しています。
運搬費用
車のスクラップ作業に関連する費用として、車の運搬費用が発生することもあります。
車の運搬費用については、自走可能な車であり自分で運転して解体業者まで持ち込む場合は無料ですが、不動車でレッカー車の手配が必要な場合は、距離により異なるものの平均で2万円~の運搬費用が必要になります。
事務手数料
また、解体業者によっては別途事務手数料として3,000円~が必要になるケースがあります。
解体業者では車をスクラップすると、その車が解体されたことを証明する為の「移動報告番号」と「解体報告記録日」の2つを取得する事が出来ますので、その手続き代金として請求されるケースが考えられます。「移動報告番号」と「解体報告記録日」には専用の用紙はなく、メモ書きなどの簡易的なものの場合もあります。この「移動報告番号」と「解体報告記録日」は、解体後に運輸支局や軽自動車検査協会で永久抹消登録を行う際に必要になりますので、無くさないように控えて保管しましょう。
車のスクラップは個人では出来ない
車のスクラップに必要な費用の内訳とその概要を前項で解説しました。
しかし、車のスクラップを業者に依頼するのであれば注意点があります。それは、個人では車のスクラップを解体業者に依頼できないケースもあるということです。
数年前までは、解体工場も個人からの依頼の車両解体を請けてどんどんスクラップしていたのですが、最近の傾向で個人依頼の解体は断り、企業から発注された車の解体しか請け負わないという解体業者が増えています。
これは個人間とのトラブルを避けるためであったり、個人からの解体車両を請負うことで日々の稼働率に差が出てしまい、設備稼働率がマイナスになって解体業者にデメリットが発生する可能性があるためです。
もちろん、今でも個人依頼を歓迎する解体業者は存在していますが、昔に比べると減少傾向にあるのは確かです。車のスクラップを予定している方は、車の保管場所近くに個人からの解体依頼を請負う解体業者がいなければ、そもそも車のスクラップ自体依頼出来ない可能性を考えて、様々な業者に確認できるように余裕を持って車のスクラップ計画を立てることをおすすめします。
お金をかけないで車をスクラップする方法
車のスクラップにかかる費用について前述しましたが、実はお金を支払って解体業者に依頼しなくても、お金をかけずに車のスクラップをしてもらう方法があります。
それが、車のスクラップを廃車買取業者に買取してもらう方法と、スクラップせずにそのまま買取業者に売る方法です。
車のスクラップは廃車買取業者で買取出来る
「スクラップ」と聞くとどうしてもゴミや廃棄物というイメージを持たれるかと思います。
しかし廃車買取業者から見ると、車のスクラップ後には価値のある資源がまだまだ残っています。日本自動車工業会が2013年に発行した冊子によると、自動車材料の構成比の約80%~70%程度は鋼板・構造用鋼・ステンレス鋼・鋳鉄などの鉄系材料といわれています。鉄系材料の他は、アルミや樹脂などの非鉄金属も軽量化に伴って増えているものの、あくまで車を構成する素材の殆どは鉄系の素材です。
廃車買取業者は、車のスクラップを鉄くずとしてではなく鉄系素材などの資源として価値を見出し、必要なところへ売却して利益化できるリサイクルの仕組みを持っているため、車のスクラップを買取出来るのです。
また、鉄などの資源素材だけでなく中古車部品の再販路も持つ廃車買取業者であれば、スクラップ時に取り出すリサイクルパーツも買取査定の対象です。リサイクルパーツの生産や販売ルートをもつ廃車買取業者は少数ですが、該当の業者であれば車種や年式によってかなりの高額査定を期待することも出来ます。新しい車であれば修理用パーツの需要に対して供給量が少ないため、パーツ販売に期待が出来ることから、スクラップ予定の事故車の買取査定が10万円以上になる事も可能なのです。
車一台から取り出すことが出来る鉄資源の相場は、下記のようになっています。
種別 | 鉄資源の価値(相場変動あり) |
普通自動車 | 10,000円~20,000円 |
軽自動車 | 6,000円~7,000円 |
鉄は何から出来る?天然資源orリサイクル?
車のスクラップから回収できる鉄スクラップは鉄のリサイクル原料となります。回収した鉄スクラップを銑鉄または電炉で溶かし、リサイクルした鉄が鉄製品の生産に使われています。もともと鉄というと、天然資源である鉄鉱石と石炭を銑鉄することでの生産が主とされていましたが、限られた天然資源であることや、原料となる鉄鉱石や石炭のほとんどが海外からの輸入に依存している状態となっています。車から回収された鉄スクラップが、新しい車の生産時にリサイクル原料として活かされることにより、鉄のサイクルが可能となるため、適切な車の廃車スクラップは天然資源を守る事にもつながっているのです。
自動車のスクラップを買取できる理由
スクラップになるような車でも廃車買取業者は買取できる理由が、大きく2つあります。
- スクラップ前提の車でも鉄系素材やパーツを取り出して売却する仕組みがある
- 自社で車のスクラップ作業とパーツの取り出しと加工、再販までを一貫して出来る
事故にあって大破した車は中古車としての再販は難しくスクラップ前提の車になりますが、廃車買取業者であれば事故の影響を受けていないパーツや素材を取り出して、修理用パーツや製造部材へと再生し再販する仕組みがあります。
またスクラップ前提の車の引取りからスクラップ作業、リサイクルパーツや部材の取り外し、パーツ等の点検や整備、再度販売するための修理を行って、修理工場や整備工場へ売却するという一連の仕組みを外部へ発注することなく自社で一貫して行うことが出来る廃車買取業者は、中間マージンが取られないためスクラップの買取時に、買取出来るようになっています。
車をスクラップせずに売る方法も
使用されていた車を手放した時、スクラップになるかどうかの基準に走行距離10万キロ以上で年式が10年落ち以降というポイントがあります。
年式や走行距離がこのスクラップする基準を越えている車の場合、メンテナンス費用が高くかかったり、13年より経過していると自動車税や重量税が重課制度で高くなるなど、維持するための負担が増えます。また、故障などのリスクを考慮して中古車販売店でも再販がしづらいため買取額が安かったり断れられたりして、多くの場合はスクラップして廃車になることが多いのです。
しかし、これが走行距離が9万キロを超えたくらい、経過年数9年目などの微妙なラインとなると、廃車にすべきか中古車として売却すべきなのか悩ましく、売り手側も判断に悩みます。
廃車だけでなく中古車の買取と販路を持っている廃車買取業者であれば、中古車として価値がある車か、スクラップして利益になる車か判断して査定が出来ます。どちらの販路も加味した買取を行ってもらえるのです。
特に、年式が古くて走行距離が多いものの問題なく走行出来る車は、それだけを理由にスクラップして廃車してしまうと大きく損をしてしまう可能性があります。それは、海外では古い車ほど価値がついたり、走行距離が10万キロを大きくこえていても中古車需要が高い車があるからです。
そのため、スクラップして廃車を選択する前に輸出販路を持っている廃車買取業者に査定をしてもらうと買取がつく可能性があります。
独自の輸出販路を持っている廃車買取業者に海外で人気のある車の買取査定を受けると、国内販路のみの業者に比べて20万円以上の差をつけて高く買い取りしてもらえることがあります。代表的な例で言えば、トヨタのハイエースやハイラックスサーフなどが該当し、特に発展途上国などでは壊れにくく信頼性の高い日本の中古車は常に人気があります。海外の輸出ルールによっては年式が古いほど価値が高くなり、国や地域のニーズにもよりますが、旧車の日産スカイラインやトヨタのチェイサーなどの車種は古いほど買取額が高い人気の車となっています。
車のスクラップに関するよくあるご質問
車のスクラップの方法や車のスクラップの買取について、よくいただくご質問をまとめて載せています。
Q.車のスクラップは車の廃棄という意味ですか?
A.車のスクラップと聞くと、英語の【scrap】には細切れという意味があることから、車を小さく細切れにして廃棄するというイメージを抱く方も多いでしょう。しかし、正しい車のスクラップの意味は、細かくして廃棄するのではなく、適正な解体処理と分別をしてリサイクルを行うことです。自動車リサイクル法により、車のスクラップの方法やスクラップ出来る解体業者には認可が必要と決められていて、適切な解体処理と合わせてリサイクルも行われています。
Q.動かない車のスクラップにかかる費用はいくらですか?
A.動かない車のスクラップを自動車解体の専門業者に依頼する場合、解体業者請求される解体費用と、動かない車を解体業者に運ぶための運搬費用が発生します。解体業者の費用相場は15,000円から、解体業者までの動かない車の運搬費用は距離によりますが20,000円からといったところですので、合計費用はおよそ35,000円からとなるでしょう。
Q.お金をかけずに車のスクラップは出来ないの?
A.車のスクラップをお金をかけずにしたいのであれば、廃車買取業者にスクラップする車の買取をしてもらうことをおすすめします。廃車買取業者はスクラップ予定の古い車や動かない車なども、引取や解体処理を自社で行いリサイクルすることで利益化できるため、買取が出来ます。解体業者に依頼するとかかってしまう解体費用や引取費用は、買取価格と相殺されてかからなくなり、さらに買取価格が上回って得することもあります。
Q.大事な愛車のスクラップもしなくてはいけない?
A.大切に長く乗ってこられた愛車を手放される方にとって、スクラップ処理と聞くと抵抗があり決断出来ないという方も多いと思います。しかし故障や事故、経年劣化などでどうしても乗ることが続けられない車は所有しているだけでも、維持費がかかり負担になってしまいます。
車のスクラップをしている専門業者は、廃棄ではなく主に車のリサイクルを行っています。車を解体して再利用出来るパーツや素材を取り外し、リサイクル出来る状態に整備加工をして、他の車の修理用部品や製造用の素材に活用しているのです。愛車スクラップは廃棄ではなく、リサイクルされて別の車の一部として活躍していく、と考えることが出来るのです。
Q.ボロボロでスクラップになりそうな車だけど買取出来る?
A.車の状態からスクラップになるだろうと想定されると、買取出来るかどうかもあまり期待できません。特に年式が10年以上前の古い車や、走行距離が10万キロ以上の沢山走っている車、事故や故障で動かない車は車としての価値も低そうです。しかし、このような状態の車であっても廃車買取業者であれば、廃車専門に様々な販路をもっているため、買取出来る可能性が大いにあります。スクラップになりそうな状態の車を手放す時は、廃車買取業者での査定見積もりを受けると良いでしょう。
Q.家族の乗っていた古いカローラを処分したいがスクラップになる?
A.年式も古くて走行距離も走っている、見た目も古そうなトヨタのカローラをただスクラップして廃車してしまうと勿体無い結果になってしまいます。
日本国内では、カクカクした古いカローラを見かけることは減りました。でも、国内で走っていないからといって、古いカローラがすべてスクラップされているわけではありません。トヨタ車で世界で最も売れたクルマになったこともあるカローラは、年式が古い車であっても人気があります。それは、海外で中古車として沢山活躍しているからです。カローラの壊れにくく修理がしやすい設計は海外のドライバーからも人気があるのです。
古いカローラも海外輸出が可能な廃車買取業者であれば、査定を受けると思った以上に買取がつく可能性がありますので、ぜひお問い合わせされてみることをおすすめします。
まとめ
車のスクラップはイコール廃車ではなく、廃車をする時の工程の一つで、車を解体することです。
車のスクラップは、認可を受けた車両解体業者が引取って、自社の設備で適切な車両解体を行います。解体してリサイクルできる部分とリサイクルできない部分を分別したら、リサイクル出来る部分は整備や加工を行い中古車部品として再販します。リサイクル出来ない部分は産廃となりますが、プレス等の適切な処理を行った後埋め立て等の処分が行われます。この認可を受けている解体業者にスクラップを依頼すると、業者によっては解体費用や運搬費用、手続き手数料が請求されることがあります。
このようにスクラップされる車にはもう価値がないと考える方が多いのですが、スクラップして取り外したリサイクル可能な中古車部品や部材は、修理用部品や新しい車の素材として再利用されるため利益化が可能です。その利益化出来る設備をもつ廃車買取業者であれば、スクラップする予定の車も買取出来るのです。
低年式車や多走行車、不動車などスクラップになりそうな車を手放す予定がある方は、まず廃車買取業者に見積もりをとってみることをおすすめします。また、複数の廃車買取業者に見積もりを依頼して、なかでも高い査定額がついた業者を選ぶことで、さらにお得に車を手放すことが出来る可能性があります。
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